米超党派上院議員による移民制度改革案 下院の反応は?
超党派の有力上院議員8人が28日、米国に1100万人いる不法移民に市民権取得への道を開く、包括的な移民制度改革の枠組みに合意したと発表した。オバマ大統領も29日にラスベガスでスピーチを行い、独自の改革案を明らかにする予定だ。
超党派の合意案では、まず国内の不法移民に犯罪歴調査や罰金の支払いなどの条件付で暫定の合法滞在を許可する。さらに英語の習得などの条件を満たせば、市民権取得につながる永住権を申請できるようにする。3月に法案化し、夏前に上院を通過させたいとしている。
また、29日に別の上院議員4人が、科学技術系で高度なスキルを持つ労働者と米大学で上級学位をとった外国人学生のビザの数をほぼ倍にふやすとする案を発表する予定だ。
海外各紙は、移民制度についてワシントンのムードが急激に変わりつつあると注目した。
【共和党の反応】
議員らは、オバマ政権が第2期の重要課題の1つに掲げる移民制度改革において、今回の改革案を議論のたたき台にしたい意向だ。
共和党議員が過半数を占める下院での反対が予想されるものの、改革案では、政府が国境警備強化を実施するまで不法移民への永住権付与は許可しないとするなど、取り締まり強化優先を主張する保守派への配慮も伺える。ただ実際は、不法移民者の市民権取得は「恩赦」になり、より多くの不法移民を招く、という反対意見は共和党内に根強くあるという。
しかし今、共和党は去年のロムニー候補の大統領選敗北から復活しなければいけない状況にある。今回の計画策定者の1人で、共和党保守派であるルビオ上院議員は、「ラテンアメリカ系有権者の支持を向上させるべき」と主張したとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。また、ベイナー下院議長もルビオ氏の主張を歓迎しているという。
【改革案の問題点】
今回の改革案にはあいまいな点が幾つかある。例えば、暫定的な滞在を許可された移民が市民権を獲得するまでにどのくらい待つのかについて不明瞭だとニューヨーク・タイムズ紙は指摘した。また、技術系企業を悩ませている、高度なスキルを持つ外国人労働者を雇うのに時間がかかるという問題に余り触れていないとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘した。
同紙はまた、国境警備強化を不法移民への永住権付与の前提条件とすることについて、「オバマ氏はその点は否定的である」と示唆する行政当局の見解を掲載した。