「政治家は全員くたばっちまえ」 イタリア国民激怒の理由
2月24~25日のイタリア総選挙まで1ヶ月を切った。世論調査では中道左派の野党民主党が優勢となっているほか、新興勢力にも侮れない支持がある。
しかし、イタリア議会は上下両院で選挙制度が異なり、上院はいくつかの人口の多い州で勝てれば、与党支配の可能性もまだ充分にあるという。その場合は「ねじれ議会」となる。
その鍵を握るカンパニア州ナポリにおいて、中下層民が現政権・政界へ強い失望を抱えていることをフィナンシャル・タイムズ紙は伝えた。雇用情勢や公共サービスは向上せず、マフィアとの癒着を含め政治家の腐敗スキャンダルが絶えない。ある年金生活者は「(政治家は)全員くたばっちまえ」と罵った。
さらに、中道右派・自由国民党のベルルスコーニ元首相が27日、第二次大戦中のファシスト独裁者ムッソリーニについて、“多くの点では優れた指導者であった、ヒトラーのドイツは完全勝利しかねない勢いであったから敵対するより同盟すべきと考えたのだろう”など擁護とも取れる発言をし、ただちに訴追要求が上がったという。なおイタリアでは、ファシズム擁護は発言すら違法である。
こうした既成政党への不信を反映してか、昨年10月のシチリア地方選挙では、コメディアンが率いる反上流層・ユーロ脱退派の新党が第一党を取る番狂わせもあり、今回も再現しないとは言えない。ただし投票率は低くなる見込みでもあり、一般的には野党に不利な状況とも言える。
一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、“今回の選挙は様子見とし、将来的に独自の新勢力を主導したい意向”というパセラ経済開発相にインタビューした。パセラ氏は、辞任するモンティ首相(無所属であったが中道の第三極を結集する意向)の現政権には時間が足りなかったと述べ、企業減税、行政改革、職業訓練、教育システム拡充などの改革続行を説いた。そして例えば野党民主党とモンティ氏の勢力が連立政権を組んだとしても、これまでの路線が踏襲されるはずであり、投資家はイタリアがヨーロッパ経済の問題児に逆戻りする心配は不要とした。ただし同紙は、そのようなイデオロギー的に広い連立は長期支配をできないだろうと見ており、モンティ氏も新政権には「組成に関わらず」長続きを期待していないという。