シェールガス開発をめぐり、ウクライナとロシアが対立か?

シェールガス開発をめぐり、ウクライナとロシアが対立か? ウクライナ政府と英蘭系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル社は、シェールガス資源の開発に関する契約を締結した。ウクライナは100億ドル規模のプロジェクトを通し、割高なロシアのガスへの依存を軽減していきたい意向だという。
 海外各紙はウクライナ、ロシア、西欧諸国の微妙な三角関係に着目した報道をしている。

【ウクライナとロシアの確執】
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、露ガスプロム社は2006年以降、ウクライナに対して強気なガス輸出政策をとってきた。ガス価格を最高で1000立方メートル当たり400ドル以上に釣り上げるなど、遠方にある多くの西欧諸国よりも高い設定をしているという。このためウクライナでは、一般家庭向けのガス料金の助成制度を設定するなどの国内対策を行なってきた。
 しかし、同国財政は2008年の金融危機から立ち直っておらず、推定150億ドルにおよぶ救済措置に関して国際通貨基金(IMF)との話し合いを現在も進めている。同紙によると、救済措置の条件として助成制度の廃止が挙がる可能性もあるという。政府は富裕層におけるガス料金の値上げの可能性を初めて明らかにしたが、低所得層には「大幅な値上がりはない」としている。
 これまで、ウクライナはロシアに対して高すぎるガス価格の引き下げ交渉を行なってきたという。しかし、ガス用パイプラインの権利引渡しや、モスクワの関税同盟への参加などといった経済的・政治的な関係強化を主張され、進展を見られずにいる。
 状況の改善を目指し、シェルとの共同プロジェクトに踏み切ったウクライナだが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ロシアも反撃に出たようだ。ロシアは、ガス輸入量の最低量を定めた2009年の「テイク・オア・ペイ」条項に基づいて、昨年の輸入不足分の罰金として70億ドルを請求しているという。ウクライナは、昨年の支払いは適切に済ませている上に、以前から輸入減量の交渉をしてきたため違反にはならないとして請求には応じない考えだ。

【西欧との利害合致なるか】
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、シェールガスの開発は環境汚染が懸念されているため、西欧諸国では賛否両論となっているという。開発が進んでいる米国に対して西欧は5−10年の遅れをとっており、今後、追いつくことは不可能とまで言われている。自国での開発がままならない中、注目されているのが旧ソ連諸国やポーランド・ウクライナなど、エネルギー輸入をロシアに依存しており国際的にも孤立気味の国々だという。特にロシアとの依存関係から脱却したいウクライナには、多くのエネルギー開発国が興味を持っているようだ。米エネルギー省によると、ウクライナのシェールガス埋蔵量は約1兆2000億立方メートル、年間80−110億立方メートルの生産が見込まれている。これは、同国の年間消費量の2割相当となる。

 IMFからの救済措置や西欧諸国との共同開発など、ウクライナは西欧との関係強化を図っていきたい意向だ。しかしフィナンシャル・タイムズ紙は、2009年のガスプロムとの契約の際に政治的職権を乱用したとしてティモシェンコ前首相が投獄されたことが、関係強化の妨げとなっていると指摘している。2004年大統領選挙に対する抗議運動「オレンジ革命」で注目を浴びた同氏は、西欧から高く支持されており、獄中では拷問や虐待を受けている可能性が高いとして国外での治療を要請するなど圧力も強まっているという。

Text by NewSphere 編集部