フィリピンが中国を訴えたねらいとは
フィリピン政府は22日、中国との間で衝突が続いている南シナ海の領土問題について、国際仲裁裁判所へ持ち込むことを明らかにした。1995年以来、平和的交渉による解決を試みてきたが、政治的、外交的手段はほぼ尽きたとし、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいて、平和的で持続的な解決策を導き出したい考えだ。豊富な漁場や石油、天然ガス資源、重要な航路帯がある同海域では、ブルネイやマレーシア、ベトナム、台湾なども中国との領土問題を抱えているが、この問題をこうした形で公にするのはフィリピンが初となる。
海外各紙は、近年強引さを増す中国の言動を受けて今回の決断にいたった、フィリピン政府の様子を報じている。
【中国の強引な主張】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、フィリピンが「強引すぎる」と非難している最近の中国政府の動きを取り上げている。まず、中国は2002年の「南シナ海行動宣言」で、南シナ海とその近海は中国の領土である点に、東南アジア諸国10カ国と合意していると強調。問題がある場合は直接交渉で解決案を模索するとの姿勢を貫いてきている。
実際には、各国との話し合いが平行線をたどる一方、様々な政策を発表してきた。昨年6月には、南シナ海の南沙、西沙、中沙の3諸島を海南省下の「三沙市」として一方的に制定し、外国船の取締を強化すると発表した。
また、新たに発行された中国全土地図では、中国が南シナ海で領有権を主張する時に用いる「九段線」を、中国大陸とひとつながりの地図に同じ尺度で書き込んでいるため、地図全体が縦長になり、従来の横長のものから大きく変化。南シナ海の大部分が中国のものだと主張する地図となっている。 関連諸国から非難されているにも関わらず、中国政府は領有権の正当性を譲らない意向だと、各紙は報じている。
【中国の歩み寄りなしに解決なるか】
サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(香港)によると、フィリピンが頼みとしている国際仲裁裁判所では、通常、両者間の話し合いのもとで仲裁をすることになっているという。しかし、中国は「問題に関しては直接交渉を行う」という姿勢を崩しておらず、今後の進展については未定だという。同紙は、これまでには片方の言い分のみを汲み取り、解決に取り組まされた事例もあるというが、フィリピンの苦肉の策でさえ中国の歩み寄りを導き出すには及ばないとの見解を示した。
また、フィナンシャル・タイムズ紙も、中国が国際社会のもとでの交渉に応じなければ解決は困難だろうとし、今後も厳しい戦いが続くことを予測している。