アルジェリア政府の強硬対応を招いたものは?
アルジェリアのセラル首相は、イナメナスの天然ガス施設で人質事件の終結を受けて、政府対応について説明した。犠牲者は8ヶ国37人の外国人とアルジェリア人数名。犯人であるイスラム武装勢力も29人を殺害したという。
未だ多くの謎が残る事件の顛末について、海外各紙はそれぞれの視点から分析した。
フィナンシャル・タイムズ紙は21日、政府と武装勢力の見解の相違を紹介した。政府側は、「アルジェリアを分断させようとした」武装勢力の意図をくじき、「外国人従業員のバスを乗っ取り、マリに連れ去って人質にしようとした」目的を阻むための強攻策は「テロを断固許さない」姿勢を明らかにしたと作戦を評価。強攻策に打って出たのも「武装勢力が施設を爆破しようとし、何十人もの外国人殺害を命じたとの情報を入手したためだ」と述べたという。
それに対し、事件を首謀したとされるベルモフタール氏側は「交渉を希望していたのに、一方的に攻撃を仕掛けてきた」と政府を強く非難。さらに、今回の事件が入念な計画に基づくものだったとし、フランスのマリでの軍事展開に反対するために、今後も、同様の「外国施設」襲撃の計画を進めていくと明言したという。
同紙の別の記事では、現在のアルジェリアの対テロ姿勢のもととなった歴史に着目した。莫大な数の死者を出した内戦や「アラブの春」に触発された近年の争乱を経験しながら、ほとんど諸外国に顧みられることもなく、ガスや石油の豊富な天然資源に頼って独自の路線を歩んできた歴史から、「アルジェリア要塞」との異名をとることを紹介。他国の動乱に巻き込まれることも、自国の問題に介入されることも極端に嫌う姿勢が今回の対応の背景にあったと分析した。それゆえに、同国では今後も、天然資源施設への外国の保安企業の進出を許さないとしており、それでも、外国資本が離れることはないと自信をにじませているという。
一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今後の影響を分析した。これまでのアルジェリアが、政治的動乱が渦巻く地理的条件にもかかわらず、比較的安全な事業の展開地だったこと、今回の事件がその認識を一変させたことを紹介。なかには同国の、今後の「安全」への信頼性回復への苦労を予想している識者もいるという。イギリスのキャメロン首相も、北アフリカのテロには何十年という単位での対応が求められると述べたとされる。
しかし一方、大手石油・ガス企業は、人員削減や現地への出張を減らすなどの対応策をとりつつも同国からの完全撤回には否定的だという。イギリスの大手石油会社の従業員組合の組合長は、ナイジェリアで誘拐された経験がありながら、同じく危険なアフリカの別国で働く人物を引き合いにだし、「賃金によっては、労働者は見つかる」と断言しているという。