ECBの「スーパーマリオ」はなぜ何もしないのか?

ECBの「スーパーマリオ」はなぜ何もしないのか? 欧州中央銀行(ECB)政策理事会は10日、主要金利の据え置きを全会一致で決定したと発表した。海外各紙は「スーパーマリオ」ともあだ名されるマリオ・ドラギECB総裁の言動に焦点を当てた。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、ドラギ総裁がユーロ情勢の「正常化」を主張していると伝えた。具体的には、国債利回りの低下、強力な資本流入、危機に見舞われたユーロ圏諸国の銀行預金の増加、ECBのバランスシートの縮小、企業の景況感調査の改善などを挙げたとのことだ。ドラギ総裁は、まだ実体経済の回復につながっている証拠はないとしながらも、「物事がうまく行っていないとき、我々はその伝染について多くのことを話します。」「しかし、私は、物事がうまく行っているときにも正の伝染があると信じています。それもまた、今現在起こっている事であります。」と語った。また同紙は、ドイツで景況感調査結果が改善し、インフレ率もECBの目標に近づきつつあり、さらに2011年8月以来初めて、どの銀行も緊急用の限界貸出制度を使わずに済んだことを指摘した。

 しかしドラギ総裁は、11月に過去最悪を記録したEU全体の高失業率については、金融政策でできることは少なく、政治家の仕事だとする姿勢を示した。総裁は「私どもの任務は完全雇用ではありません」「物価の安定を確保することが、成長と雇用創出のための長期的な基礎を与えると信じています」と発言。経済回復についてのリスクは、構造改革への政府の行動不足から生じると主張した。ガーディアン紙(英)は、「スーパーマリオ(ドラギ総裁)は、仕事は終わり・戦いには勝った・さあ休むぞと、そう考えているように聞こえますね。スーパーヒーローは去ってゆくのです。失業者を政治家に任せて。」との批判の声を載せた。

 またウォール・ストリート・ジャーナル紙も、ECBの無策を疑問視。FRBは失業率を下げるためにモーゲージ債を購入し、日銀は国債や不動産投資ファンドを含む資産を購入、スイスの中央銀行はスイス・フランを安く維持するために外貨を購入している、と他国の中央銀行の施策を挙げた。そのうえで同紙は、9月にECBがスペイン国債の無制限購入の姿勢を示しただけで国債市場が安定したことについて、ドラギ総裁がどんな利下げより効果があったとコメントした事例に言及している。

 なお、ユーロ相場は対米ドルで上昇。各紙は、ECBがいずれさらなる緩和に踏み切るとの予測が原因としている。

Text by NewSphere 編集部