グーグル会長による北朝鮮訪問の意味とは?
米グーグルのシュミット会長が、7日、中国を経由して北朝鮮の平壌に入った。シュミット会長は、この訪問がグーグル社としてではなく私的なものであるとしているが、同行するリチャードソン前ニューメキシコ州知事は、韓国系米国人(昨年11月以来「敵対的行為」を理由に北朝鮮政府に拘束されている)の解放を求めて、北朝鮮高官と会談する予定であると述べている。なお、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル開発に対して制裁を求めている米国務省は、今回の訪問をタイミングが不適切であると批判していた。
米国人解放交渉とグーグル会長の訪朝という一見すると無関係な組み合わせには、どのような意味が隠されているのか?
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、リチャードソン氏は、1996年以来7度北朝鮮に訪問し、外務省高官との会談も経験しているという。ニューヨーク・タイムズ紙は、リチャードソン氏が元国連大使という経歴をもち、北朝鮮政府によって拘束されていた米国人を解放した実績があると紹介しているが、同時に、シュミット会長がなぜ今回の訪朝に参加したかについてリチャードソン氏は明らかにしていないと報じた。この点について、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、シュミット会長の訪朝参加理由は、北朝鮮における今後のソーシャルメディアなど、経済的な関心にあるというリチャードソン氏の談話を報じている。
しかし、リチャードソン氏が説明するこの理由は、北朝鮮がウェブ使用に最も厳しい規制を敷いている国であり(フィナンシャル・タイムズ紙)、最もインターネットに敵対する国(ニューヨーク・タイムズ紙)であることを勘案すれば、説得力に欠ける。
ここでフィナンシャル・タイムズ紙は、北朝鮮が政策方針を転換した可能性について触れている。すなわち、金正恩氏が新年の施政方針演説において南北朝鮮の関係改善と人民の生活水準の向上を重視し、核開発について言及しなかったため、民生部門に関係するシュミット会長の訪問と符牒する、という見方も成り立つというわけだ。しかし同紙は、アナリストの見解として、このような推測には確たる証拠がないとしている。
またニューヨーク・タイムズ紙は、北朝鮮が米国の要人による訪朝を歓迎する向きがあると報じている。同紙によると、その理由は北朝鮮指導者に対する敬意として喧伝することができるからであり、同国には外国の著名人による贈呈品を展示する特別な博物館があるという。同紙は、これまでも、拘束した米国人を保釈するために北朝鮮が、元大統領のジミー・カーター氏やビル・クリントン氏などの要人による訪朝を要求してきた経緯があるとしている。また同紙によると、北朝鮮国営の中央通信社は、今回の訪朝団を「グーグル訪問団」として報じたという。