なぜ今、インドとパキスタンは銃撃戦を起こしたのか?
海外各紙は、軍事衝突に関わる複雑な様相について報じている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回の衝突による影響を報じている。それによると、インド、パキスタン両国がここ数ヶ月取り組んできた関係改善の努力が無に帰す可能性もあるという。同紙はこの懸念の背景として、(1) 核を保有する両国が停戦合意以来10年間、戦死者をともなう衝突を起こすことがまれであったこと、さらに、(2) 両国がこれまでカシミール地方の主権を巡って全面戦争を2度も行なってきていることを挙げている。(1) については、ニューヨーク・タイムズ紙も、10年間続いた停戦協定が破棄されたのは、尋常ならざることとして報じている。アルジャジーラは、両国間の関係改善への兆しがゆっくりであるとしながらも、昨年12月にはビザの発行制限を緩和するという合意がなされたばかりであったと報じている。
アルジャジーラは、印パによる関係改善の取り組みがアフガニスタンにも波及し、皮肉にも、パキスタンが恐れを抱いていると報じている。アルジャジーラによると、インドがアフガニスタン(パキスタンと同じくイスラム教国)に対して経済的軍事的支援を申し出ているため、パキスタンが自国の影響力低下を案じているのだという。米国がパキスタンに対して、アフガニスタンとの国境付近に潜むアルカイダを攻撃するように要請しても、インド国境で兵員が必要であり派兵できないという理由でパキスタンが乗り気になれないのは、2014年に多国籍軍がアフガニスタンを引き上げた後に、このイスラム過激派を利用してインドの影響力に対峙するためではないかとの観測(米高官による)があるとアルジャジーラは報じている。今回の衝突は、まさに、その「理由」が裏付けられたかのような格好となった。