インド、強姦抗議デモ隊の真の要求は?

インド、強姦抗議デモ隊の真の要求は? 21日から22日にかけて、インドの首都デリーで数千人規模の強姦事件抗議デモが続き、一部は暴徒化している。政府は司法委員会の任命など事件への真剣な対応を約束する一方、数人が集合することさえも禁じた戒厳法を急遽制定したが、デモ隊は政府機能の集中するインド門地区へも押し寄せる勢いとなった。警察は催涙ガスや放水砲を発射、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると学生や警察官を含む約85人が負傷した。

 このデモは、先週、走行中のバス車内で23歳の女性が運転手を含む6人に襲われ、瀕死の重傷を負った強盗強姦致傷事件を発端としている。しかしフィナンシャル・タイムズ紙は、デモ隊が真に要求するのは(すでに終身刑の可能性まであるはずの)量刑の厳罰化よりも、確実な有罪判決だと伝えている。2011年、インドは2万4千以上の強姦事件が報告されたが、容疑者のうち26%しか有罪とされなかった。また伝統的な女性蔑視的文化の残るインドでは、強姦被害者は信用されず、裁判での扱いも配慮を欠き、警察や家族は被害申告を思いとどまらせようとするという。従って、表面的な対策ではなく、司法システムおよび文化面の抜本改革が必要となるとのことだ。

 またニューヨーク・タイムズ紙が伝えるデモ隊の要求は、裁判所が、審理中で約10万にも及ぶ強姦事件の進行を早めること/警察は速やかに強姦の被害届受理を誓うこと/議会は強姦、セクハラや児童虐待に関する法律を強化するための特別セッションを開催すること/デモへの強圧的対応に関して警察コミッショナーを更迭すること、となっている。

 さらに、今回の事件はきっかけに過ぎず、根底には一般的な「エリートとそれ以外の間の安全格差」と、長年の政府や警察への腐敗に対する不満があるとも指摘した。同紙はデモ隊への暴力的鎮圧、および政府中枢の守りに偏重した警備態勢を強調する一方、「インドでは毎年警察官に対して8万以上の人権侵害苦情が出されており、さらにそれは警察官による犯罪実数のごく一部でしかなく、そのほとんどが女性に対する性的暴行である」という、元ヒンドゥスタンタイムズ編集者の主張を紹介した。

Text by NewSphere 編集部