海外紙はなぜ自民党に「警告」したのか

海外紙はなぜ自民党に「警告」したのか 16日、日本の衆議院選挙で、自民党が480議席中の294議席を獲得し、圧勝した。公明党と連立を維持すれば3分の2の安定多数を上回り、法案が参議院で否決されても再可決可能になる。前回308議席を獲得した与党・民主党は57議席の惨敗で、衆院初挑戦で第3党となった日本維新の会(53議席)とは4議席の差しかない。野田佳彦首相は民主党代表を辞任した。しかし投票率は59%と、記録的な低さになっている。
 またウォール・ストリート・ジャーナル紙は、投票前からすでに新政権への期待のため、円が下がり日経平均株価が上昇していることを指摘した。

 一方、自民党の安倍晋三総裁は、自民党に100%信頼が戻ってきたというよりも3年間の民主党政治の混乱にノーという国民の声であり、国民は、自民党が本当に変わったかどうか、希望を満たせるかの、厳しいチェックを施すだろうと語った。同様に各紙も、問題山積の国家運営の中、安定多数があるからと言って自民党が不人気な政策を採れば、再度簡単に逆方向への地滑りが起きるだろうと警告している。また安倍氏が首相を1年で投げ出した前歴を持つことから、安倍氏個人はあまり有権者に信任されていないと指摘した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、前回同程度に大勝した民主党政権も、最初の鳩山首相は「党と議会の交通渋滞で内紛の中、一年足らずで辞任を余儀なくされた」と指摘した。同紙は、政策内容以上に政権が長続きすることがまず重要と論じている。

 各紙は自民党の公約を紹介。安倍氏が最優先課題とした「景気回復とデフレ克服」のための大型財政出動や日銀へのインフレ圧力、基地移転問題でこじれた対米関係改善のほか、軍備増強や尖閣問題などでの対外強硬路線も予想されている。しかしニューヨーク・タイムズ紙は安倍氏が同時に中国との関係改善も誓っていると報じ、また平和憲法の破棄も不人気政策に含まれるとした。また同紙は、他にこれといった選択肢たる党がなかったことが自民党圧勝の理由と説明。民主党はとりわけ震災と原発事故の対応を誤り、当の福島でさえ、原発推進派のはずの自民が軒並み勝利。「反原子力感情の波に乗ろうと先月後半に結成された」日本未来の党は「ただでさえ縮小中の経済を電力不足が傷つけるとの懸念の中で失速」。日本維新の会も目標である第2党奪取に迫ったが、石原慎太郎氏と合流したことでかえって勢いを失ってしまったとした。

Text by NewSphere 編集部