日本はEUとの経済連携をすべきなのか?-TPP以外にも進む貿易拡大の動き-
EUはこの度、日本と経済連携協定(EPA)の交渉を開始することで合意した。自動車産業が痛手を受けるとして反発している国は一部あるものの、ユーロ圏債務危機から抜け出すためにアジア域内での経済協力を拡大させたいEUにとって、中国に次ぐ2番目の貿易相手国である日本との協定を実現させたいようだ。
海外各紙は、長期戦となりそうなEPA交渉がもたらす影響を報じている。
日本とEUの国内総生産(GDP)は合計で世界の約3分の1を占めており、EPAによる関税撤廃を通じ、1500億ユーロ(約16兆円)規模の巨大な自由貿易圏の創設が可能となる。これにより日本は自動車や電気製品などの輸出拡大と共に、消費者が欧州製品を安く購入できるメリットが見込める。また、既にEUと自由貿易協定(FTA)を結んでいる韓国の2倍の貿易量が期待でき、近隣諸国との競争条件の差を縮めることができるだろう。
一方EU側は、薬品や食品業界などで42万人の雇用創出とGDPの0.8%上昇を見込んでいる。ユーロ圏債務危機からの脱却を望む欧州委員会は、「日本との経済協定のチャンスを逃すわけにはいかない」と語っているとブルームバーグ紙は報じている。
欧州委員会が意気込みをみせている一方で、フランスやイタリアなどの自動車産業国は、日本との貿易拡大により業界がさらなる窮地に追い込まれるとして反対している。フィナンシャル・タイムズ紙によると、EPAが実現すれば、7800台の輸出増加に対して44万3000台の輸入増加が予測され、同業界では2020年までに7万3千人が失業に追い込まれるとしている。今後はそのような事態に備えてセーフガード(緊急輸入制限)を実施する条件などを含めた交渉が始まる。また日本の関税は低いものの、非関税障害(NTB)が市場を守っているとの非難も強いと指摘される。ただ、NTBの中には影響力の小さいものも多くあり、EUがそこに固執することで交渉が複雑化されることを懸念する専門家の声もあると同紙は報じた。
今後は、来年早期に予定されている日・EU首脳会議で交渉が開始する見通しだ。日本が次の1年間でNTB撤廃などの公約を遂行しない場合は、交渉が打ち切りになる可能性もあるというが、順調に行っても協定締結までには5年近くかかるだろうと各紙は推測している。