パレスチナ「国家」昇格、アメリカ・イスラエルが恐れる事態とは?

パレスチナ「国家」昇格、アメリカ・イスラエルが恐れる事態とは? 29日の国連総会で、パレスチナ自治政府が「オブザーバー国家」として承認された。立場的にはバチカン市国と同格であり、国連総会での投票はできないが、領土権や領空権が発生するほか、国連専門機関への加盟が可能になる。
1947年の同日、イギリス支配下のパレスチナをユダヤとアラブで分割する決議から、ちょうど65周年を記念する節目での出来事であった。各紙は、自治政府のあるラマラ市街にて決議可決の報せに沸く民衆の様子を伝えている。

 決議は賛成138、反対9(イスラエル・アメリカ・カナダなど)、棄権41と圧倒的票差で可決され、パレスチナと敵対するイスラエルにとっては厳しい結果となった。最近イスラエルとの戦闘で過激派のハマスが名を挙げたため、穏健派であるファタハを中心とした自治政府の立場は相対的に弱体化していたが、ハマスより信頼できる交渉相手と認められたことが自治政府の外交的大勝利につながったという。なおウォール・ストリート・ジャーナル紙は、そのハマスさえも、方針を転換して国連参加への支持を表明していたと報じている。決議は投票前から可決が濃厚で、投票前、自治政府のアッバス議長は口を極めてイスラエルを非難、各国に「最後のチャンス」として「パレスチナ国家の出生証明書」を求めていた。対するイスラエルのネタニヤフ首相は、現実に影響しない空虚な決議であるなどと否定していた。アメリカのライス国連大使も「平和への道にさらに障害物をばらまく不幸で逆効果な決議」などと批判した。

 イスラエル陣営が最も恐れるのは、自治政府がイスラエルの占領行為を国際法違反・戦争犯罪などとして、国際司法裁判所に訴え出ることだと各紙は解説している。実際既に、アメリカ上院ではそれを憂慮する超党派グループが、自治政府への援助打ち切りやワシントンのパレスチナ解放機構事務所閉鎖など、対抗措置の法制化を目指して動き始めているという。ニューヨーク・タイムズ紙は、パレスチナの参加を認めたユネスコ(国際連合教育科学文化機関)に対して、アメリカが分担金の支払いを停止した実例を挙げ、こうした事態の再来を懸念している姿勢だ。

Text by NewSphere 編集部