インド、テロリストの死刑執行―海外紙は印パ関係に注目―
インドは21 日、2008 年 11 月のテロの実行犯であったアジマル・カサブ死刑囚(25)の死刑を執行した。このテロは 3 日間に及び、死亡者 166 人、負傷者約 300 人の大惨事となったものだ。テロリストグループは、パキスタンに拠点を置くイスラム過激派のラシュカエ・タイバを母体としており、カサブ死刑囚は、10 人からなる実行犯グループの唯一の生き残りであった。インドにおける死刑執行はまれであり、2004 年以来のこととなった。
海外紙は、今後の印パ両国に及ぶ影響について論じている。
死刑執行に対するパキスタンの反応について、フィナンシャル・タイムズ紙は、パキスタン高官による談話として、テロ実行グループをパキスタン政府が支援した事実はなく、死刑執行が今後の印パ関係に及ぼす影響は小さいとしたと報じている。さらに、同紙は、遺体がインド国内で埋葬されることになり、パキスタンに運び込まれることによる刺激を回避できたことで同高官が安堵しているとも報じている。また、ニューヨーク・タイムズ紙は、パキスタン国内における死刑執行に関する報道が、インドとは対照的にかなり少なく、パキスタン政府も直接的なコメントを避けていると指摘した。
印パ両国に横たわる今後の問題について、フィナンシャル・タイムズ紙は、両国の関係改善の努力にもかかわらず、過激派ラシュカエ・タイバが影響力を維持するというアナリストの見方を報じている。さらに同紙は、安全保障のコメンテーターの意見として、印パの外交努力が同グループによって頓挫することはないであろうが、米国がタリバンとの合意に向かう素振りを示しているために、同様の過激派が今後も活発化するとの見通しを掲載している。また、ニューヨーク・タイムズ紙は、死刑執行後も両国間の問題は山積しており、特に、テロ実行犯の指揮者をパキスタン政府が首尾よく訴追できる能力と意思があるかどうかが鍵であると論じている。これに関して、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、パキスタン政府の緩慢な動きをインド政府が非難していると報じている。
死刑執行に至ったインド政府の思惑について、ニューヨーク・タイムズ紙は、インド国内の政治状況にからめて論じている。同紙によると、グジャラート州で来月実施される極めて重要な選挙において、与党国民会議派が負ける公算が強く、さらに反イスラム・反パキスタンの風潮が高まっていることから、政治的な判断が働いたとする見方があると報じている。