東アジアサミット開幕―南シナ海問題をめぐる米中のせめぎ合いに着目―
20日、ASEAN(東南アジア諸国連合)と、日・中・米などの首脳が参加する東アジアサミットが、カンボジアの首都プノンペンで開幕した。同首脳会議を前に、ASEAN指導者らは、南シナ海をめぐる中国との緊張緩和を求める姿勢を示した。今年のASEAN議長国を務めるカンボジアは18日、「ASEAN指導者らは今後、南シナ海を国際的な問題としないことで合意した」と語った。それに対しフィリピンのアキノ大統領は19日、「主権国家として国益を守ることは我々の権利である」と反論した。
また、同首脳会議の終了に合わせ、中国、日本、インド、オーストラリアなど16カ国によるRCEP(地域包括経済連携協定)の交渉が開始される見通しだ。さらに、日・中・韓3カ国によるFTA(自由貿易協定)の交渉開始が正式に合意される。これにより、アジア地域における貿易自由化を目指す取り組みが本格的に始まる。
海外紙は、南シナ海問題を海洋の安全保障という観点で重視しているアメリカと、当事国以外の関与を受け入れない考えを示す中国との間のせめぎ合いに注目し、両国の歩み寄りは難しいとみている。
南シナ海問題をめぐり、ASEANは中国に対して共同戦線を構築していたが、中国の強硬な姿勢でそれは崩壊したとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。また同紙は、カンボジアの声明は明らかに中国の機嫌とりだと指摘した。カンボジアは中国から経済援助を受けており、親密な同盟国であるという。中国外務省の秦剛報道官は、東アジアサミットは「東アジア地域の国際的な金融危機の影響にどう対処するかに焦点を当てるべきだ」と述べた。一方、米外交官は、「APECやG20など、主要な経済フォーラムは他にもたくさんある」と発言した。
また、東アジアサミットの終了と同時にRCEPの交渉が始まる。2015年度末までの妥結を目指しているが、成功すれば、16カ国の貿易ブロックは合計20兆ドルの経済規模となり、世界経済のほぼ3分の1を占めることになる。しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、RCEPの交渉妥結は難しいとみている。日本は農業部門、韓国は米農家の保護を希望するなど、アジア諸国政府は国内の重要部門の保護に熱心なため、これまで地域協定の締結に苦労してきた経緯がある。また同紙は、RCEPのプロセスは、米国主導のTPP(環太平洋連携協定)を弱体化させるかもしれないと指摘している。そして、「我々がTPPのような高レベルの自由貿易協定を実現できるとは思わない。我々は互いに調整し、譲り合って、共通の土台を見つけなければならない」という、経済産業省の河本雄交渉官のコメントを掲載した。