どうなる「財政の崖」問題―海外紙は民主党と共和党の妥協策に着目―

 オバマ大統領は、16日に開かれる米議会指導部との「財政の崖」に関する協議で、今後10年間で1.6兆ドル(約128兆円)の税収増を提案する見通しだ。これは、2011年夏に共和党の指導者との会議で議論された8000億ドルの倍額となる。また、富裕層増税に難色を示している共和党との妥協策として、高額所得層に対する住宅ローン金利控除や、慈善事業への寄付控除などが廃止される可能性がある。
 オバマ大統領は議会外でも働きかけを行っており、13日に労組と、14日に実業界の幹部らと会合を開いた。16日の米議会指導部との協議前に、市民団体指導者とも会合を行う。
 海外紙は、富裕層増税、給付金制度の構造改革をめぐる、民主党と共和党の妥協策に着目した。

 大統領は14日の記者会見で、中間所得層の減税は継続するが、国民の2%の富裕層に対する減税は打ち切る考えを強調している。一方、共和党は給付金制度改革こそ長期的な予算の資金源であると主張している。もし民主党が給付金制度の構造改革を受け入れるなら、共和党は新歳入に同意するだろうと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はみている。フィナンシャル・タイムズ紙もまた、キャピタルゲイン(譲渡益)税率、配当税率を引き上げないなら、共和党は富裕層への課税強化に賛成するとみている。しかし、民主党が富裕層に対する減税抑制を補完物として考えていることなどについて懸念を示した。
 
 ニューヨーク・タイムズ紙は、こうした状況下で、次期共和党指導者争いが勃発していることに着目した。下院共和党の指導部は、やり手と評判のマクモリス・ロジャース下院議員(ワシントン州)を昇格させ、白人男性の多い共和党指導者に女性を投入しようとしていると報じた。しかし保守派のプライス下院議員(ジョージア州)がこれに反対しているため、今後の動向に注目している。

Text by NewSphere 編集部