アメリカ「財政の崖」は回避できるか?―海外各紙は、両党の歩み寄りに着目―
オバマ大統領は16日、議会の民主党・共和党指導部との正式な協議を予定している。それに先立ち、13日に労組や財界、14日に経済界の指導者らとも会談する。年明けに減税失効と歳出の自動削減が重なる、「財政の崖」問題を回避するための方策がテーマだ。
海外各紙は、短期的には「財政の崖」回避に向け共和党がどう歩み寄るか、長期的にはアメリカの経済財政政策の行方に着目した。
オバマ大統領は、富裕層増税を必要と従来の主張を貫いたが、財政政策に関して妥協する余地はあると歩み寄りの姿勢を見せている。一方、下院共和党トップのベイナー下院議長は、富裕層への増税には依然として反対しているが、「歳入増加」は必要だという方針には合意した。さらに、ロムニー氏の顧問を務めたグレン・ハバード氏は、「限界税率を上げずに富裕層の税を上げる方法を見つけることが、行き詰まりを解除できる」と示唆。共和党のトップエコノミストも、「米議会は財政の崖を回避するため、富裕層増税に同意する必要がある」という見解を示した。フィナンシャル・タイムズ紙は、大統領選前には増税反対の姿勢を貫いていた共和党に、こうした姿勢軟化の兆しもみられることを報じた。民主党議員もこの姿勢は歓迎しつつも、「悪魔は細部に宿る」として、警戒の姿勢もみせているという。こうした状況下、大統領は16日の協議に向けて、富裕層増税と歳出削減を組み合わせた赤字削減についての合意を国民に求めるだろう、とニューヨーク・タイムズ紙はみている。14日の企業幹部との会談では、メディケアやメディケイドなどの給付金制度の将来的な削減を保証し、議会で共和党員が増税を受け入れるよう、彼らに協力を求めるともみられている。
目前に迫る「財政の崖」への対処という短期的な問題だけでなく、中長期的な課題も大きいと指摘される。ニューヨーク・タイムズ紙は、オバマ大統領の課題として、税制の包括的な見直し、連邦債務の適切な制限を挙げた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、企業の競争力を高める税制改革、次世代に向けてどのように資金を使うか、議論をすることが重要という見方を示した。