薄熙来氏夫人に殺された英実業家 その真の姿はスパイだった?!
2011年5月、重慶市のホテルで、遺体で発見された英国人、二―ル・ヘイウッド氏について、ウォール・ストリート・ジャーナルがこのほど、同氏が生前に英情報局秘密情報部(MI6)のスパイとして、薄氏一家の情報を流していたと報道した。インタナショナル・ヘラルド・トリビューンもやや控えめの論調ながら、これをソースとして同様の記事を報道。中国の権力移譲の第18共産党大会を前に、政治的エリート層の職権乱用や内部闘争を浮き彫りにし、党を揺るがした、薄熙来氏の大スキャンダルに新たな光が当てられた形だ。
当初、過剰飲酒による心臓発作として処理されたヘイウッド氏の死については、紆余曲折を経て、党の要人だった薄氏の妻・谷開来氏が毒殺容疑で逮捕された。公式説明は「ヘイウッド氏が息子に害をなすと信じたための毒殺」。谷氏には、8月、執行猶予付きの死刑判決が下され、すでに服役中。累は薄氏にもおよび、次期大会で中共のトップ9である中央政治局常務委員会入りを有力視されていた身から一転、党籍をはく奪され、訴追を待つ身となった。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、今年3月にはすでに、ヘイウッド氏のスパイ疑惑を示唆していたが、英外相はこの憶測の鎮静化に努め、「雇用関係」も「任務の命令」もなかったと説明していた。しかし、同紙はこのほど入手した内部情報に自信をにじませ、これを、「正式なスパイ」ではなかった、という意味の肯定と示唆。まるで007を演ずるような派手な挙動と薄氏との関係をことさら顕示する態度が、「裏の裏」をかくための作為だったと分析した。
ニューヨーク・タイムズはこの点につき、谷氏がヘイウッド氏をスパイと疑っていた様子はなく、審理においても一切俎上に挙げられることはなかった、という弁護士の談を報じた。一方、ウォール・ストリート・ジャーナルはそれを認めつつ、殺害の公式説明には欠落やあいまいさがあると指摘している。同紙によれば、谷氏がヘイウッド氏殺害について「スパイを殺した」と語ったという内部情報があるという。
薄一家とヘイウッド氏の関係は、ヘイウッド氏が薄夫妻の息子の英国留学をあっせんしたり、海外送金の窓口となったりしたことから深まったとされる。蜜月破たんのきっかけには、ヘイウッド氏のリベートの要求が過剰になった、(秘密を厳守する)忠誠の証として谷氏が求めた離婚をヘイウッド氏が断った、など諸説ある。
真相はいまだやぶの中。ただ、英中両国のメンツや利害がうごめく様子が、改めて浮き彫りになった。