トルコ、シリア機がロシア軍用機器を密輸と摘発―ロシア・シリアは反発―
10日、シリア航空のモスクワ発ダマスカス行きエアバスA320型機(乗客35名)が、トルコ上空にてトルコ軍戦闘機に強制着陸を命じられた。トルコ当局によれば、着陸後の臨検で、ロシアからの供与と見られる軍用機器が多数発見・押収されたという。現在、具体的な押収品目は明らかになっていない。同機は7~8時間後に飛行を再開し、11日ダマスカスに到着した。
ロシアは禁制品の積載を否定し、臨検の行われ方に問題があると主張、シリアも「海賊行為」だとしてトルコを非難した。トルコ側は正当な措置であると主張し、米国もトルコを支持している。
昨今のシリア内戦において、ロシアは体制側、トルコは反体制側をそれぞれ擁護しており、微妙な情勢下での出来事となった。ただ海外各紙によれば、元々両国は経済的繋がりが強いため決定的亀裂には至らないだろうとの見方が多い。実際、12月に予定されているロシア・プーチン大統領のトルコ訪問に影響はないようだ。
Financial Timesの報道姿勢―双方の主張対立―
トルコの報道では「ミサイル部品や軍用通信機器が発見された」との情報もあることを紹介している。一方ロシアの報道は、トルコの機内捜索の行きあたりばったりさを強調するニュース番組を一日中流し続けたことを取り上げた。
なお今回の事態については、シリアに対する国連の兵器禁輸措置はかかっていないものの、民間旅客機で軍需品を輸送してはならないとトルコ首相がコメントしていることを報じた。
International Herald Tribuneの報道姿勢―ロシア・トルコ関係を懸念―
シリア難民がトルコに大挙流入している関係上、トルコとしてはシリア問題に対し介入を強めざるを得ず、ロシアもそれを承知している、と指摘した。ただし、両国は互いに重要な貿易相手国であり関係強化の努力が続いてきたとしながらも、「今や状況は変わった」とのロシア側コメントを伝えるなど、両国関係に対し比較的強い危惧を抱いている論調だ。
The Wall Street Journalの報道姿勢―シリア混迷の長期化―
ロシアは以前からシリアを支援し続けていたが、ロシア機に対する警戒が強まった結果、シリアの民間機を利用せざるを得なくなったと解説している。またシリア内戦が激しさを増す状況を強調し、シリア政府自身国連の調停を欲しながらも、現在の国連停戦案には同意できないでいるという、シリア情勢の混迷を伝えている。