IMF、世界経済へ警告 具体的なねらいは?
国際通貨基金(IMF) は、経済問題を抱えるユーロ圏、および日米両経済大国に対して警告を発した。ユーロ圏諸国に対しては経済成長の鈍化と失業率の増大について、日米に対しては国債利回り急上昇の危険性について取り上げた。
予測される事態とその対策を各紙はどう見ているか?
Financial Timesの報道姿勢―欧州の危機と対策―
IMFは、ユーロ圏の資本の危機が解決されなければ、銀行のバランスシートの縮小、経済成長の鈍化、失業率のさらなる増大が引き起こされるとしている。IMFの報告書によれば、通貨統合の解体を懸念して、ユーロ圏外周部から中心部に向かって資本の逃亡が起きているため、ヨーロッパの資金調達市場が極度に断片化されているという。なお欧州中央銀行(ECB)は、金利の不均衡を是正するために、OMT (アウトライト・マネタリー・トランザクション) プログラムによる国債の買い入れをすでに計画していることにFTは注目している。
The New York Timesの報道姿勢―IMFの現状と批判―
IMFは1946 年の設立以来、貧困国に対して援助を行なってきたが、今や資金の半分以上がユーロ圏に流れている。IMFの役割が増す中、欧州中央銀行(ECB)はIMFに対して新たな任務を託した。スペインなどの負債を抑制する対策をECBが講じた場合に、その国に対する監視を要請したのである。しかし、IMFにも問題がある。IMFの資金の流れや役員選出が欧州中心になっているために、加盟 188 ヶ国の中には怒りの声をあげている国もある。さらに、近年の欧州危機に際し、ユーロ圏諸国がプライドのためにIMFへの救済要請が遅れ、事態が深刻化するという課題がみられると指摘した。
The Wall Street Journalの報道姿勢―資本の逃亡と日米―
IMFは、日本および米国が世界の資金の逃亡先となっており、長期的な危機に直面していると警告した。日米両国は負債額が増加しているにもかかわらず、歴史的な低金利となっている点が他国と大きく異なる。原因は欧州からの資本逃亡であり、このような状況は今後問題となる可能性があると指摘した。つまり、欧州危機への対処が成功し、日米が経済政策を誤ると、両国から資金が引き上げられ、国債の利回りが一気に上昇することを懸念した。特に、大量の国債を引き受けている日本の金融機関は大きな脆弱性を抱えていると警告している。IMFは、リスク評価などによって事前に対策を立てることが重要であるとした。