トルコ、シリアに報復攻撃 両国の今後の関係は?

シリア アサド 4日、トルコがシリア領内に対して砲撃を行った。これは、先日シリアがトルコに行った攻撃に対する報復として実行されたものだ。シリアの攻撃によって、トルコ領内のアンカラでは、子どもを含む4 名の死亡者と 9 名の負傷者が出ていた。
 両政府の思惑と今後の動向は?

Financial Timesの報道姿勢―トルコ政府の意向を探る―
 トルコによる報復は、シリア内戦がトルコに飛び火したものである。トルコ首相府は、「トルコは、国際法および交戦規則に則り、シリア政府による我が国の安全に対するこの種の挑発行為を決して許さない」と声明を出した。ただしトルコ首相は、シリアとの対決は「罠」としてとらえ、これ以上の衝突を回避したい旨を明言している。
 ワシントンの外交問題評議会のスティーブン・クック氏は、トルコが事態をエスカレートさせることを望んでいるようには見えないとしている。攻撃も1回限りのものと見ており、シリア政府の対応に注目している。

International Herald Tribuneの報道姿勢―シリア政府の反応―
 シリアによるトルコへの攻撃によって死者が出たことに対し、シリアの外相は弔意を示すとともに、攻撃は意図したものではないと述べた。さらに、原因は調査中であるとした。また同外相は、武装した者をシリアに入国させないよう隣国に対して要請した。シリアおよびトルコ間の国境が武器密輸に使われていること、ならびに、同地域が多種多様な目的をもつテロリストによって脅威にさらされていることについて言及している。関係諸国がこのような状況に置かれているため、冷静な対応をするようにシリア政府は呼びかけている。

The Wall Street Journalの報道姿勢―今後の動向について―
 トルコ報復の原因となったシリアの攻撃が、故意によるものか偶発的なものかは不明だが、アナリストはシリアが攻撃から得るものはないとしている。一方、NATO は集団として対処することに消極的であるとする外交官もいる。クリントン米国務長官は、トルコ外相に米国の支持を約束した。全面戦争の可能性が高まったものの、シリア政府軍が反体制派との戦いを強いられているため、その可能性は低いと見るアナリストもいる。元駐トルコ米国大使によると、トルコの報復を考慮し、シリア政府がトルコを刺激しないという結論に達したという。
 またアラブの関係筋は、イランがトルコに介入することによって NATOを巻き込む危険を冒すことはないと指摘した。

Text by NewSphere 編集部