日銀短観発表 円高・中国との関係に懸念

 日本銀行は1日、7-9月期の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。これによると、大企業製造業の業況判断指数(DI)はマイナス3で、前回調査のマイナス1から2ポイント悪化となった。一方、非製造業はプラス8と高水準で横ばいとなった。
 海外各紙は、世界経済の減速と円高による輸出の不調が響いているとし、概ね悲観的だ。約7割の企業が回答を完了した9月後半に中国で反日デモが拡大したことから、実際は発表結果より悪化しているはずと指摘する声もある。

Financial Timesの報道姿勢―円高の影響に焦点―
 FTは円高が日本経済に与える影響に注目した。日銀短観で大企業製造業のDIが悪い原因の1つに、1年にわたる過去最高水準の円高を挙げた。アジア諸国のライバルに対し、価格競争力が弱いと指摘した、日本の各メーカーは、国外への生産移動などのコスト削減努力を行なっているが、それはデフレスパイラルを深めるリスクもあると報じている。一方、鉄鋼業界などでみられたように、円高が業界再編成の触媒として役立つ面もあることにふれている。

The New York Timesの報道姿勢―日中経済の悪化を分析―
 まず日本については、輸出主導型経済のため欧米の需要減退の影響を受け、円高傾向がそれに拍車をかけたと指摘した。さらに中国との緊張関係により、ビジネスに悪影響が出ていることも一因だとしている。改善のため、日銀は追加金融緩和策を打ち出したが、アナリストは不十分とみて、厳しい状況が来年も続くと予測している。
 次に中国については、景況感を示す指数が予想を下回る低い水準で、アナリストは「持続的な経済低迷」だとみていることを報じた。これは中国政府の利下げや財政出動の失敗を意味しており、11月の指導部交代後に打ちだされる政策に期待する声もあるとした。
 さらに、台湾・韓国・インドといった国々のデータも取り上げ、軒並み不調であると報じた。

The Wall Street Journalの報道姿勢―好材料にもふれる―
 WSJも基本的には悲観的な見方をした。日銀短観の結果に加え、個人景況感が1年ぶりに悪化していることや、海外経済の減速とエコカー補助金終了の組み合わせによって、主要自動車部門の景況感が大打撃を受けたことも指摘している。一方、東日本大震災の復興需要の継続により、主要な非製造業指数がプラス8、12月見通しがプラス5であるなど、好材料にもふれている。

<参考リンク>
日銀短観概要
(日本銀行)

9月の日銀短観を見る上での注意点
(久保田博幸)

日銀短観に見る企業マインド悪化は景気後退局面入りの前触れか?
(官庁エコノミスト)

Text by NewSphere 編集部