オバマ大統領、国連演説-アラブ圏へのメッセージに込められた本当の狙い-

 25日、オバマ大統領は国連総会で演説し、イランの核開発を阻止するためは「必要な措置」をとると発言するとともに、国連加盟国の結束を促した。外交を通じ問題を解決する時間は残されているが、無限に時間があるわけではないと圧力をかけている。さらに、駐リビア大使の殺害事件などアラブ圏で勃発する暴動に対しては、暴力と不寛容を許す余地はないと強調した。
 オバマ大統領のアラブ圏へのメッセージは抽象的で、問題解決にはつながらないとの批判もある。大統領選の争点にもなりうる課題であり、どんな狙いでの発言かが、注目される。

Financial Timesの報道姿勢-オバマ大統領の葛藤…民主主義と内政不安定-
 オバマ大統領の演説を、アラブ圏諸国との関係修復を模索したものだと評した。アメリカ外交にとって、中国の台頭などアジアが長期的に重要である一方、日々の外交において中東が重要であると再確認する演説だったとも述べている。オバマ大統領は3年前、アラブ圏諸国との「新しい関係」をうたったが、最近の反米デモにより、その主張のもろさが明らかになったと指摘した。オバマ大統領は、エジプトなど民主主義国家の選挙への介入はしないと明言したが、暴力デモは受け入れられないとも述べた。

The Wall Street Journalの報道姿勢-対アラブ外交方針は大統領選の争点になるか?-
 オバマ大統領は、外交政策の弱さが指摘されており、今回の国連演説は今後の大統領の対アラブ外交方針を予測する機会として注目された。演説ではイランに対し核開発停止を求め、軍事的措置も辞さないという強い内容だったが、具体的な条件等には言及せず、交渉の余地を残した。一方ロムニー氏は、オバマ大統領の発言に対し、問題解決につながっていないと批判している。なお、レバノン首相などアラブ諸国首脳は、暴力と不寛容を許さないというメッセージを評価していることにもふれた。

 オバマ大統領が言及したアラブ圏諸国は、独裁政権から自由を手に入れたばかりだ。裏返せば内政が不安定であり、反米デモの急速な拡大・暴徒化の要因でもある。民主主義・自由の価値を標榜し「アラブの春」を容認したオバマ大統領としては、正面から糾弾することもできないため、対応に苦慮しているのではないか。
 また、対アラブ外交方針は大統領選の争点になるか注目されているとWSJは述べている。しかし、オバマ大統領・ロムニー候補の発言からはそうした意図は伺えない。NewSphereでは引き続き大統領選の争点・両候補の主張をレポートしていく。

Text by NewSphere 編集部