トヨタ、中国工場での生産削減-海外紙は日本経済悪化を懸念―

 トヨタ自動車は、中国での10月の生産を白紙化する方針だ。日本から中国市場向けに輸出する製品についても削減する。トヨタは、需要に合わせた調整として、特定の問題への言及を避けている。しかし、日中間の尖閣問題が背景にあることは明らかだ。
 今後の日本の自動車産業、さらに日本企業のビジネスへ与える影響は?海外紙の分析をまとめる。

Financial Timesの報道姿勢‐日本の自動車産業への影響に注目‐
 今回の判断に至った要因として、反日デモの影響などで中国の消費が減退していること、工場は再開したものの生産が落ち込んでいること、中国へ輸出する部品等の通関が遅れていることなどを指摘した。尖閣問題をめぐる日中間の対立の影響であり、長期化によるリスクをFTは懸念している。背景として、トヨタは今年度年間約100万台の販売(海外販売分の約1割)を見込んでいたように、中国が重要な市場であること、欧米競合企業との競争が年々激しくなっていることを指摘した。さらに、トヨタより中国への依存度が高い日産はコメントを拒否したが、「状況に応じた変化」を示唆していると報じた。

The Wall Street Journal の報道姿勢-日本・世界のビジネスへの打撃に着目‐
 今回の事態に象徴されるように、尖閣問題に端を発した日中の軋轢は、計り知れない経済的影響を与えたのではと指摘した。
 両国の経済的関係はここ10年で急拡大しており、今では日本にとって中国は最大の輸出先であり、中国にとって日本は2番目の輸出先かつ最大の投資国の1つであると紹介した。日本→中国→各国という貿易が主要な形のため、両国の経済関係への打撃は世界的に影響を与えかねないという指摘もある。ただ、日中の政治関係がぼろぼろになろうとも、他の関連要素が膨大なため、経済関係には限定的な影響しかないとの指摘もある。むしろ長期的には、中国で操業する自動車メーカーは、ボイコットへの対処より、貧弱なマーケティング基盤に悩まされるという分析もある。
 なお、ビジネスの正常化を望む日本は、米倉経団連会長・張トヨタ自動車会長が中国政府高官と交渉に臨む予定だ。

 海外紙が指摘する通り、日中間の外交問題が、日中間の経済だけでなく世界経済へも影響を与える可能性は否定できない。民主党政権になって以来、経済界中心に中国との関係性強化に注力してきたこともあった。しかし、国家として事なかれ主義ではなく、軍拡など強硬な態度を続ける中国に対し、長期的に何を取るべきか、選択しなければならない時期だろう。

Text by NewSphere 編集部