テレビがいかに権威主義を培養しトランプ氏当選に役立ったか

Andy Dean Photography / Shutterstock.com

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著:James Shanahanインディアナ大学 Dean of the Media School)、Michael Morganマサチューセッツ大学アマースト校 Professor Emeritus of Communication)

 大量のインク(とメガバイトもの電子テキスト)が、ドナルド・トランプ氏の思いがけない勝利を解説するために費やされた。

 トランプ氏の勝因には、白人労働者階級の怒り、アメリカ連邦捜査局(FBI)ジェームス・コーミー前長官によるヒラリー・クリントン氏の電子メール問題の捜査の再開の決定、低い投票率などが挙げられ、いずれも勝利に一定の役割を果たしたようだ。選挙の勝因が単一の要因に依るものだったと考えるのは間違いだろう。

 選挙戦中に我々が実施した調査によると、上記の混合要因にさらに加えるべき要因があることが示唆されている。調査結果はJournal of Communicationに公開したばかりだが、その要因とはテレビだ。

 何も、ケーブルテレビやトランプ氏または政治広告に提供される無数のフリーメディアを指しているのではない。

 むしろ、普段のテレビ番組、それも、連続ホームコメディーや警察ドラマ、職場ドラマ、リアリティー番組など、大のテレビ好きが1日少なくとも数時間は視聴する番組と、それが政治的立場に与える影響だ。

◆権威主義の精神
 過去40年にわたる複数の研究は、定期的に長時間テレビを視聴することにより、暴力、性、科学、健康、宗教、少数派などの見解が形成される可能性があることを示している。

 一方、我々が20年前にアメリカとアルゼンチンで実施した調査では、テレビを見れば見るほど権威主義的な傾向と視点を抱く可能性が高くなることが判明した。アメリカ、アルゼンチン両国の長時間視聴者は、より大きな恐怖感、不安感、不信感を抱いていた。また、一致することに価値を見出し、「他者」は脅威と考え、多様性に不快感を示した。

 おそらくそれには理由があるに違いない。性、民族、人種のステレオタイプは今度も多くの番組に 普及し続ける。テレビは複雑な問題をより簡単な形式に作り直し、問題解決のアプローチとして利用する暴力が賛美される傾向がある。『ハワイファイブオー』『フラッシュ』のようなフィクション番組は、人々を危険から守り、物事の正しい秩序を回復する勇敢なヒーローが出演する決まりきった暴力を目玉としている。

 つまり、登場人物にいかに価値観が置かれ、問題がいかに解決するか、という点において、テレビ番組は権威主義的な精神を目玉とすることが多いのだ。

◆視聴習慣とトランプ氏支持
 以上を考慮した時、我々は権威主義的価値観をもつことはトランプ氏支持の強力な予測因子となることを示唆する複数の調査に好奇心をそそられた。

 我々はこう考えた:テレビの視聴が権威主義の一因となり、権威主義がトランプ氏支持を支える原動力となっているとすれば、テレビ視聴は、間接的に、権威主義の培養という手段で、トランプ氏支持に寄与しているのではないか。

 党大会が開催される約2か月前、我々は1000人以上の成人を対象にオンライン全国調査を実施した。我々は調査対象者に支持する候補者についての質問した(当時の選挙戦の候補者はクリントン氏、サンダーズ氏、トランプ氏)。

 次に、視聴の方法、視聴時間など、テレビ視聴の習慣について質問した。

 また、人の権威主義的傾向を測定する際、政治学者により用いられる一連の質問も行った。具体的には、独立心と年長者に対する敬意、好奇心と礼儀正しさ、自立と服従、思いやりがあることと礼儀正しいことのうち、それぞれどちらの資質が子供にとって一層重要であるかを質問した。それぞれのペアのうち、後者の方がより権威主義的価値観をもつ。

 すると、長時間視聴者が権威主義的尺度により高い得点をつけるという結果が得られ、我々が独自に行なった先の調査が裏づけられ、さらに、より権威主義的な回答者がトランプ氏を支持するという他の複数の研究も裏づけられた。

 さらに重要なのは、権威主義がトランプ氏支持に関する多くのテレビ番組の視聴効果に”介在”していることが判明したことだ。すなわち、長時間視聴と権威主義を総合すると、トランプ氏支持との間に有意な関係が見られた。これは性別、年齢、教育、政治思想、人種、ニュース視聴の有無の影響を受けていない。

 娯楽が政治的結果をもたらす可能性に言及するのは我々が初めてではない。今回の大統領選挙直後、デイヴィッド・キャンフィールド氏はスレート(Slate)に掲載した記事の中で、ゴールデンアワーが「人種差別的な」「恐怖を煽る」「金持ちを支持する」「科学拒否」の制作番組であふれていると言及しているとした上で、一見「害のないゴールデンアワーの現実逃避」と思われる番組は実際に「トランプ氏が選挙キャンペーンによって進めている排他的思惑を強化」していると続けている。我々のデータはこれが単なる憶測ではないことを明らかにしている。

 いずれもテレビがドナルド・トランプ氏の勝利に決定的な役割を果たしたことを意味するものではない。だがトランプ氏はテレビによって育まれる権威主義的な考え方に完璧に一致する人物だった。

 我々が「単なる娯楽」と考えるものが実はアメリカの政治に実に深い影響を与えている可能性があるのだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by サンチェスユミエ

The Conversation

Text by THE CONVERSATION