露呈した安倍政権の傲慢さ、海外メディアも指摘 2つのスキャンダルで拙い対応

安倍首相

 最近の世論調査で安倍内閣の支持率が急落している。原因は、森友学園、加計学園問題などのスキャンダルへの対応のまずさや、テロ等準備罪法案を強行採決したことなどが有権者に不信感を持たせたためと海外メディアは見ており、圧倒的な支持を受けてきた長期政権に起こった異変に注目している。

◆官邸や自民党のやりたい放題に国民の不信感増大
 ロイターは、数ヶ月前までは安倍政権は3期目も視野に入れ、憲法改正の夢へ向かって順調に進んでいたが、縁故主義への疑惑や、国会での強行採決などが原因で支持率が急落したと報じている。特に影響したのが加計学園問題で、疑惑そのものより、4年以上も1強状態で傲慢な安倍首相とその側近が、首相に歯向かった前川前事務次官を中傷したこと、また追及をかわそうと大急ぎでテロ等準備罪法案を成立させ国会を閉じたことによって、スキャンダルをもみ消そうとしたという印象を多くの有権者に与えたことが問題だったと指摘している。

 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙(ST)は、安倍首相は6ヶ月弱で2つのスキャンダルに襲われ、いずれの場合も自民党が重要人物の証人喚問に消極的で、これが傲慢で何かを隠しているという印象につながったという観測筋の見方を伝えている。

 イーストアジア・フォーラムに寄稿したニューサウスウェールズ大学のオーレリア・ジョージ・マルガン教授は、たとえ安倍首相が危機を乗り越え、鉄板ならぬ「テフロン(加工)首相」であることを証明したとしても、2つのスキャンダルによっていかに首相と側近のふるまいに問題があるかを露呈したと述べる。2014年の内閣人事局設置で、「官邸ルール」が発動したと同氏は述べ、中心人物の菅官房長官とその側近が霞が関の人事権を握っているため、官僚は官邸の意思に逆らえないという政府関係者のコメントを紹介している。また、日本の政権運営における官邸主導は非常に明白だが、制度的、組織的、または政治的メカニズムによってチェックされていないと指摘しており、加計学園問題が単に必要な「リアリティ・チェック」になっているのかもしれないと皮肉を述べている。

◆都議選が指標。自民大敗は政権への脅威
 2018年までは総選挙の必要はないことや、野党の低迷と衆参両院を自民党がしっかり押さえていることから、海外メディアは支持率低下が安倍政権の終焉を意味するとは見ていないが、7月の東京都議選への影響が政権にとっては心配の種だと述べている。

 STは、自民党は裏切り者である小池知事の「都民ファーストの会」との接戦に挑むとし、下村博文自民党幹事長代行が都議選への危機感を強めていると報じている。また、首相が19日の記者会見で謝罪と反省を述べたのも、都議選で大敗すればさらに支持を失い、政権維持の脅威となるからだとする東京財団の加藤創太氏のコメントを紹介している。

 ロイターは、小池氏が築地の移転を遅らせたことでいくらか人気を失い、最大野党の民進党も支持率が1ケタ台としながらも、日本全体のトレンドを先導するのが都の世論だと述べ、「もし都議選で自民党が議席の半分を失えば、安倍政権の不安定さを心配する声が出る」というあかつき証券の藤本知明氏の意見を紹介している。

◆安倍政権の終わりは日本経済の終わり?まずはアベノミクスの推進を
 フォーブス誌に寄稿した早稲田大学政治経済学部の若田部昌澄教授は、一連のスキャンダルは日本経済に関係するとし、安倍首相が失脚することは、アベノミクスの終わりを意味すると述べる。すでに自民党内には「反アベノミクス勉強会」も出来ており、消費増税、金融緩和の「出口戦略」の早期実施を求める政権に変われば、政策全体が完全に逆行し、日本経済回復の道は絶たれてしまう可能性もあるとしている。

 同教授は、安倍首相はこれ以上政治的スキャンダルを広げてはならないとし、首相はアベノミクスを強化することにフォーカスすべきで、それにより日本経済は回復の軌道を維持し、国民の信頼を取り戻すことができるとしている。

Text by 山川 真智子