日本を裏で支配するカルト!? 外国人ジャーナリストが見る「日本会議」とは

 このところ、海外メディアで「日本会議」に関する記事が増えている。7月10日の参院選の結果、改憲勢力が衆参両院それぞれ3分の2以上の議席を占め、事実上改憲の発議が可能となった。このままでは安倍政権とその黒幕である日本会議が、日本の民主主義を逆行させるのではないかと、3人の外国人ジャーナリストが声を上げている。

◆目指すは未来のための歴史の書き換え?
 全国に拠点を持ち、3万8000人の有料会員を持つ「日本会議」は、公式HPによると、皇室敬愛、新憲法制定、国の名誉と国民の生命を守る政治の再生、健全な教育環境の再生、防衛体制の整備と世界への平和貢献、世界各国との友好と共存共栄の実現を目的とする民間団体だ。神道とのつながりも深く、首相の靖国神社参拝の継続を望んでいる。さらに、国会議員の3分の1、また内閣の半数以上が同団体のメンバーであり、政権への影響力が大きいと見られている。

「日本会議」に早くから注目していたのは、インデペンデント紙やエコノミスト誌に記事を書いているデビッド・マクニール氏で、2015年9月にアジア・パシフィック・ジャーナルに掲載された論文の中で、気まずい過去を正当化し、それを21世紀の日本のために書き直すことが日本会議のミッションだと指摘している。

 マクニール氏の考えは、参院選前に出されたエコノミスト誌の記事にも反映されているようだ。同誌は、日本会議は日本が東アジアを西洋の植民地主義から解放したことを讃え、軍隊を再建し、左翼の教師たちに洗脳された学生に愛国心を教え込み、戦前のように天皇を崇拝することを目指す修正主義者だと断じる。戦後アメリカがもたらした民主主義を称賛するどころか、占領やリベラルな憲法が国家を弱体化させたと見ているこの団体が、政府に強い影響力を持っているのに、日本のメディアからはほとんど注目されていないのは奇妙だとし、その理由は安倍政権と強いつながりをもっているためだと見ている。

 日本会議が改憲で目指すのは、9条の削除と、伝統的家族の価値観を加えることで、自民党が2012年に出した改憲草案に反映されていると同誌は述べる。特に、不戦の部分を削除することは、中国や韓国に日本の軍国主義が再燃していると主張する口実を与えてしまうことにもなり、日本会議の掲げる目標のひとつである「他国との友好関係の構築」が全く逆のものになるのではないかと懸念している。

◆帝国主義に回帰。トランプ氏より危険?
 組織犯罪など、センセーショナルな話題で日本に関する記事を海外メディアに提供している、ジャーナリストのジェイク・アデルスタイン氏も、日本会議を猛批判している。同氏は、ベストセラーとなっている「日本会議の研究」の著者である菅野完氏にインタビューしており、参院選前に米ウェブ誌「Daily Beast」で、日本会議を「保守的神道カルト」と呼び、そのゴールは平和憲法を骨抜きにし、男女平等を終わらせ、外国人を追い出し、やっかいな「人権」法を無効にし、日本を帝国主義に戻すことだという結論に達している。

 そして、安倍首相や大臣の多くも信奉者だとし、読者のアメリカ人に日本会議の影響を理解させるため、右翼のキリスト教グループに属するドナルド・トランプ氏が大統領になり、そのグループが「アメリカ会議」と呼ばれ、王政復古、移民排斥、女性の権利はく奪、言論の自由の規制を支持し、彼が政治的に任命した人々がすべて「アメリカ会議」のメンバーであったと想像すればよいと、極端な例を示している。

◆国民の権利も犠牲に。改憲は決まったも同然か
 自民党の政治家や閣僚は、西欧の人権理論に基づいた現憲法に不満を持つ日本会議メンバーが中心であり、もう改憲という日本会議の野望を止められないと見るのが、米ナショナル・レビュー誌のレギュラー寄稿者、ジョシュ・ゲラーンター氏だ。

 同氏は、日本会議に属する政治家は、「自虐的歴史観」を忘れ、再軍備を求めていると主張。また、彼らによって作られた自民党の改憲草案は、国家神道と天皇崇拝への道をも開いてしまうと述べる。さらにこの案には、公の利益と秩序のために個人の自由と権利を犠牲にする内容も含まれており、国民投票となれば、51%の有権者が自身の市民権に反する案に一票を投じるとは考えにくいが、一方で与党に3分の2の議席を衆参両院で与えてしまったのは有権者自身だとも述べ、案が信任されてしまう可能性も示唆している。

 同氏は日本の現状を踏まえ、オバマ大統領が5年前に外交政策の軸足をアジアに移すことを求めたことを評価。南シナ海で中国が台頭し、北朝鮮が核実験を続ける中、アジアで最も大切な同盟国であり、世界で2番目に裕福な民主主義国である日本がファシズムに回帰する間、何もしないでいるよりはよいだろうと述べ、すでに自民党の改憲案が採用されたかのようなコメントで記事を締めくくっている。

Text by 山川 真智子