“扉は開かれた” 日韓首脳会談に韓国紙は一定の評価 “歴史と経済は分けるべき”との主張も
歴史認識における摩擦から、ここ数年、緊張状態が続いてきた日韓関係。11月2日、両国首脳同士としては約3年5カ月ぶり、安倍首相と朴勤恵大統領としては初となる首脳会談が開催され、両国の関係改善、強化が達成されるかに注目が集まった。日本ではすでに報道各社がこれについて様々に分析、意見を寄せているが、韓国でも今回の会談の意義について、メディアを中心に議論の盛り上がりを見せている。
◆“条件付きの成功”、韓国メディアが報じた日韓首脳会談
結論から先に書くのであれば、3大紙をはじめとする韓国メディアの多くが、今回の日韓首脳会談について条件付きながらも「成果があった」と結論付けた。まず中央日報の社説は、「今回の会談の目的を、出口の見えない韓日関係の突破口と位置付けるなら、それなりの成果を成し遂げたと見ることができる。盧武鉉 – 小泉、李明博 – 野田会談のように、互いの顔を赤くしたまま終わった首脳会談も少なくなかった」とした。これは、近年の日韓関係や、過去に物別れに終わった会談と比較すれば、多少なりとも前進があったという指摘だ。また、東亜日報は、「慰安婦問題解決するとした韓日首脳、関係改善の扉は開かれた」と題した社説を発表。その中で「朴大統領と安倍首相は、より頻繁に面会を重ね、協力を拡大して両国関係を改善すべきだ」とした。
◆歴史問題、今後の交渉に厳しいオーダーも
一方、朝鮮日報やハンギョレ新聞は、会談の成立自体は肯定的に評価しながらも、日本の「今後の努力を期待する」と強調した。朝鮮日報は、従軍慰安婦問題以外の“諸懸案”についても丁寧に触れた。そのなかで、交渉の過程において、日本が産経新聞支局長の裁判問題、強制徴用工に対する韓国最高裁判所の判決など内政に重圧をかけることは、今後の日韓関係に悪影響を及ぼすだろうと言及している。
またハンギョレ新聞は、「両首脳は従軍慰安婦問題と関連し早期に解決するための協議を加速するとした。(中略)問題解決への意思は見せたものの、具体性に欠ける表現である。(中略)韓国人が最も敏感に捉えている事案を解決しないまま、手を取り合って遠くまで行くことは容易ではない」と、従軍慰安婦問題の具体的かつ、完全な解決を主張している。
◆もうひとつの共通点、経済問題と東アジアの秩序の安定
条件付きの歓迎表明と同時に各社に共通して見られた主張は、東アジアの秩序維持と経済的利益のために、両国は一刻も早く関係改善を進めなければならないという点だった。
米国の東アジアにおけるリバランス政策への対応、北朝鮮の核ミサイル問題、TPP、日中韓自由貿易協定(FTA)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)など、日韓が取り組まなければならない問題は山積している。韓国メディアは直接的な言及を避けているが、台頭する大国・中国に対して、両国が関係改善を進め、日米韓の3国同盟が緊密に連携を取って対処すべきという示唆も含まれているように思える。概して言えば、東アジアの平和と安定、経済的繁栄には、両国間の関係強化は必須だという主張である。
一部には、日本との歴史問題の摩擦で、経済的負荷を抱えた韓国国内の事情も透けて見えた。東亜日報は社説のなかで「日本の韓国への直接投資と韓国の対日本輸出入規模、日本人観光客など、すべてが急減した」としつつ、歴史問題と安全保障・経済・文化協力を分けた「ツートラック」対日外交戦略を強化すべきとして文を締めくくっている。
日本は、国力的にも、戦後の国際社会への貢献の歴史でも、アジアでリーダーシップを握るべき存在であり、韓国もまた東アジアの秩序に欠かせない中心的な国家である。世界中に点在する歴史問題という難題を率先してクリアすることで得られる国際社会からの称賛は、きっと大きなものになるはずだ。日韓関係が、文字通り「未来志向の関係」に1日も早く歩を進められるよう期待したい。