原発再稼働に向かう日本、核廃棄物処理は大丈夫?プルトニウムなど米メディア注目

 九州電力・川内原発1号機で10日、原子炉への核燃料の搬入作業が終了した。同原発は来月の再稼働に向け準備が進められている。また15日には、原子力規制委員会によって、四国電力・伊方原発3号機が新規制基準を満たしているとの判断が下された。同原発では今後、再稼働を目指し動き出すことになる。これらと時を合わせて、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、原発にとって避けて通れない問題、使用済み核燃料など核廃棄物の問題を取り上げた。そこには日本ならではの問題もあるようだ。

◆廃炉にせよ、再稼働にせよ、核廃棄物の問題からは逃れられない
 ブルームバーグが注目するのは、使用済み核燃料など、核廃棄物の処分の問題だ。日本国内で約1万7千トンの使用済み核燃料が、原発の貯蔵プールなどで保管されている。これらは現在のところ、行き先がない。日本は、使用済み核燃料を再処理し、取りだされるウラン、プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」を基本方針としているが、そのための再処理施設はまだ操業に至っていない。また、再処理をしても、高レベル放射性廃棄物が後に残されるが、それを数万年レベルで保管するための最終処分場の候補地はいまだに見つかっていない。

 ブルームバーグは、そんな日本の状況をやゆしてか、「日本へようこそ、桜と寿司、日本酒、そして1万7000トンの高レベル放射性廃棄物の国へ」と語っている。

 さらに、日本の場合、2011年の福島第一原発事故後に原発の安全基準が強化されたことで、老朽化した原発5基の廃炉が決定している。廃炉では、使用済み核燃料、冷却水の高レベル放射性廃棄物が数トン生じるのに加え、建物や設備から、数千トンの低レベル放射性廃棄物が出てくる、とブルームバーグは語る。

 これら放射性廃棄物について、日本ははっきりした処分計画を持っていないため、廃炉費用は最終的に当初の見積もりの倍になる可能性がある、と米エナジーソリューションのシニア・バイスプレジデント、コリン・オースティン氏が語っている。エナジーソリューションは放射性廃棄物処理の会社で、ブルームバーグによるとアメリカの全ての廃炉プロジェクトに携わっているという。

 その上、廃炉に向けた作業が始まっている福島第一原発では、6基のうち3基がメルトダウンを起こしている。その廃炉に必要な技術は、まだ開発されていない、とブルームバーグは語る。廃炉に必要な期間についても、東京電力は40年と見積もっているが、環境保護団体グリーンピースはその2倍かかるかもしれないと主張しているという。

◆日本のプルトニウム、多過ぎ…?
 WSJ紙が注目するのは、使用済み核燃料の再処理によって分離されたプルトニウムを、日本が世界的に見ても大量に保有しているという事実だ。分離されたプルトニウムは、潜在的には核爆弾に転用可能だ、とWSJ紙は伝える。

 日本はかつて、使用済み核燃料の大部分の再処理を、フランス、イギリスの会社に委託していた。内閣府が昨年9月に公表した「我が国のプルトニウム管理状況」によると、国内に約11トン、仏英に約36トン、計約47トンのプルトニウムを日本は所有している。核兵器を保有していない国の中では最大の量だという。

 近隣国、特に韓国と中国は、日本がなぜそれほど大量のプルトニウムを必要としているのかを長らく問題にしている、とWSJ紙は伝える。また、核不拡散の取り組みを世界で主導しているアメリカにとって、これは頭痛の種だとしている。

◆なぜこれほどまでに大量のプルトニウムを抱えることになったのか
 日本がそれほどプルトニウムを保有している事情について、WSJ紙は解説を行っている。それによると、日本のプルトニウムの保有量は1970年代から増え始めた。当時、日本はプルトニウムを使用して高速増殖炉で発電したいと考えていた。しかし、その技術の発達は十分に進まなかった、と同紙は語る。

 1990年代後半、日本政府は、既存の原発で、プルトニウムとウランの混合燃料(MOX燃料)を使用することで、プルトニウムの保有量を減らす新計画(プルサーマル計画)を策定した、と同紙は語る(高速増殖炉「もんじゅ」が1995年に事故を起こした影響があるだろう)。日本政府は2015年までに、MOX燃料を消費する原子炉を16~18基にすることを目指していたという。

 しかし、福島第一原発事故によりその計画が崩れた。原発再稼働の歩みは遅く、また現時点で原子力規制委員会の安全審査に合格している5基のうち、MOX燃料の使用が認められているのは1基しかない。1基で消費できるプルトニウムは、年間わずか0.5トンほどでしかないという。

「政府は、保有するプルトニウムは全て平和的に使用すると言っているが、そのための現実的な見取り図を何ら示すことができていない点が問題だ」と日本原子力産業会議の服部拓也・元理事長は同紙に語っている。

Text by 田所秀徳