基地抗議の動画流出で処分の元在沖米軍高官、「オール沖縄」に違和感 米メディアで持論
沖縄県の翁長雄志知事は、先月27日より米軍普天間飛行場の辺野古への移設反対を訴えるためにアメリカを訪れていた。ハワイ訪問後、30日よりワシントンに滞在し、米政府関係者や上院議員らと会談を行った。米政府関係者は、辺野古移設が「唯一の解決策」との姿勢を崩さなかった。
◆米上院議員、政府関係者の反応は
訪米には、糸数慶子参院議員、城間幹子那覇市長、稲嶺進名護市長、県議会議員、経済界メンバーら約30人が同行した。
2日、翁長知事は、米上院軍事委員会の委員長であるマケイン上院議員と会談した。知事は、県内で移設反対の大規模な集会が開かれるなど、反対の民意が示されていると説明したという。会談後にマケイン氏が発表した声明によると、氏は会談で知事に対し、「沖縄県内で海兵隊を移転する現行の計画を、これまで通り支持すると表明した」とのことだ。
3日には、知事は米国務省で、同省のヤング日本部長、国防総省のアバクロンビー次官補代理代行と会談した。会談後、国務省が発表した声明によると、両氏は会談で米国と日本両政府は普天間飛行場の代替施設となるキャンプ・シュワブでの飛行場の建設で確固たる約束をしている、と強調したとのこと。また両氏は、この移設計画が、作戦、政治、金銭、戦略上の問題に対処し、普天間飛行場の継続的使用を避ける唯一の解決策であるとの説明を繰り返したという。ロイター、AP通信は、両氏のこれらの発言を軸に報じた。
◆辺野古移設反対を掲げて当選した翁長知事
翁長知事は昨年の知事選で、米軍基地の県内移設反対を公約して勝利した。ウェブ誌『ザ・ディプロマット』は、知事の日本政府への働きかけは、これまであまりうまく行っていないとし、それを受けて知事は今週、米当局者に自身の主張を直接伝えたいと思い訪米しているのだ、と報じた。
さらに同誌は、「しかし移設計画の変更ということでは、今回の訪問で、あまり前進できていなさそうだ」とし、加えて、「日米両政府は、移設計画に実行可能な代案はないとしており、知事が今後取り得る選択肢は限られている」と指摘した。
◆「オール沖縄」は事実ではない?
政治学者のロバート・エルドリッジ氏は米ワシントン・タイムズ紙に寄せたオピニオン記事で、「沖縄県知事によるこうした訪米は、翁長知事が初めてではない。これまでにも多くの知事が、米軍駐留をめぐる問題をアメリカに訴えるために渡航している」と語っている。こういった渡航は(琉球政府時代の)1950年代前半に始まったが、1990年代、大田昌秀知事の時代に、それまでよりもはるかに頻繁に行われるようになったという。大田氏は米大学への留学歴がある。氏は自身の著書で、基地問題について、日本政府よりも米政府のほうが同情的だろうと語っているようだ。
エルドリッジ氏は、沖縄の基地をめぐる問題には、表と裏があり、目に映る以上のものがある、と語る。翁長知事のワシントンでの会談が始まる前に書かれたこの記事では、ワシントンの人間、なかでも報道界と、シンクタンクの世界にいる人間は、これ以上だまされてはいけない、と警告している。
氏は、沖縄の基地反対派の主張に、大きな疑念を持っているようだ。例えば、昨年の知事選では、基地反対の動きが「オール沖縄」というくくりで語られたが、実際には、沖縄の世論は非常に割れているので、これは事実からほど遠い、と語る。
また、普天間飛行場の辺野古移設反対派は、昨年から「新基地」建設と呼ぶようになったが、氏は「これは事実ではない」と語る。実際は、辺野古に60年近く駐留しているキャンプ・シュワブでの、滑走路などの代替施設の建設だ。この点については、国務省で行われた会談でも、新基地ではなく既存の基地の増強であると米側が指摘した、と国務省の声明で伝えられている。
氏は、この他にも活動家によって作り出された作り話はたくさんある、と語る。活動家は、地元メディア、国内外の「平和」団体、反基地勢力を支持基盤とする政治家と緊密に協力している、と述べている。
エルドリッジ氏は、大阪大学で准教授を務めた後、2009年から今年3月まで在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長を務めた。しかし今年2月、反基地運動家がキャンプ・シュワブの敷地内に侵入し、基地警備員に拘束された問題で、この様子を撮影した監視カメラの映像を流出させたことで、氏は解任された。当初、地元メディアでは、拘束は不当だとの主張が伝えられていた。