日米韓、人権問題でも北朝鮮に圧力 “奴隷同然”出稼ぎ労働者からの外貨収入を遮断へ
北朝鮮の核問題をめぐる6ヶ国協議の、日本、アメリカ、韓国の首席代表が、27日、ソウルで会合を開いた。北朝鮮は9日にも、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験を成功させたと発表するなど、軍備強化の姿勢を対外的に示し続けている。14日に日本政府が安全保障関連法案を閣議決定した際、安倍首相は記者会見で、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることの例として、北朝鮮の弾道ミサイルを特に挙げた。北朝鮮に対して、さらに圧力をかけるべきだとの声が出ている。
◆6ヶ国協議が長らく停滞中している間に…
6ヶ国協議は、北朝鮮に核兵器開発を断念させるために2003年に設けられた枠組みだ。中国を議長として、日本、アメリカ、韓国、ロシア、そして北朝鮮が参加している(日本政府は北朝鮮を正式な国として認めていないため六者会合と呼んでいる)。
しかし2008年12月を最後にこの協議は開かれていない。北朝鮮は2006年、2009年、2013年に核実験を実施し、また弾道ミサイル開発計画を積極的に進めている(AFP)。協議がストップしている間に、北朝鮮は核兵器の原料となるプルトニウム、ウランの貯蔵量を増やしているとの懸念が高まっている(インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(INYT)紙)。
◆核武装・ミサイル開発をあくまで追求する北朝鮮
現在、北朝鮮は交渉のテーブルに再び着くことを拒んでおり、むしろ挑発的行動を行い続けている。
北朝鮮は、長距離弾道ミサイルに搭載可能なほど小型の核弾頭を製造したと主張している。また最近は、上述のとおりSLBMの水中発射に成功したと主張した(AP通信によると、これらの真偽について、専門家は疑いを抱いているという)。
北朝鮮は、核実験およびミサイル実験のために、国連とアメリカから制裁を課されているが、北朝鮮はこの措置を、国防という自国の絶対の権利への攻撃と見なしている、とロイターは語る。北朝鮮は、米政府やその同盟国が、北朝鮮を核保有国として正式に受け入れることを一貫して要求している(AP)、また、重層的な国連制裁と外交的孤立に関わらず、核・ミサイル計画を推し進めている(AFP)。
◆不透明さと緊張を増す北朝鮮情勢への対応は待ったなし?
27日に開かれた日米韓による会合は、この現状の打破を目指したものだ。AFPは、長らく進展のない6ヶ国協議の復活に向けて、打開策を求めるものだったと語る。聯合ニュースは、日米韓は、北朝鮮を協議に復帰させる努力を続けると同時に、北朝鮮への圧力と制裁を徐々に強めることで合意した、と報じた。
北朝鮮では、金正恩第1書記が国防相を不忠誠のかどで処刑した、と韓国の情報機関が今月発表した。そのことで、北朝鮮の安定性についての懸念が浮上した、とAP通信は指摘する。韓国の代表、外交部の黄浚局朝鮮半島平和交渉本部長は、北朝鮮の不透明で緊張した状況を考えると、今回の会合はとりわけタイムリーなものだと語ったという(AFP)。
今回の会合で、日米韓は、事態は急を要するとの認識に基づいて、北朝鮮の核・ミサイル計画に対処する方法について突っ込んだ話し合いを行った、と日本の代表、外務省の伊原純一アジア大洋州局長は語ったという(聯合ニュース)。ロイターによると韓国代表は、「われわれは、北朝鮮に挑発を思いとどまらせ、制裁の有効性を高める方法について、詳細に論じた」と語ったという。
◆圧力をかける手段として、北朝鮮の人権問題にも踏み込む?
INYT紙によると、今回の会合で議論された選択肢の中には、北朝鮮を出入国する船の貨物検査の強化などの他に、北朝鮮の人権問題に踏み込むものがあるようだ。
同紙によると、北朝鮮当局は、中国、ロシア、東南アジア、中東、アフリカの、工場や建設現場、木材伐採地などの現場に、何万人もの労働者を送り込んでいるのだという。その収益は年間何億ドルにも上ると見積もられているが、元労働者と人権団体によると、労働者は劣悪な労働条件、時には奴隷同然の労働条件で働かされており、稼ぎの大半は当局によって取り上げられるのだという。この北朝鮮の外貨収入源に、圧力をかけようというのだ。
人権問題は非常にデリケートな問題であり、日米韓はこれまで、北朝鮮との核交渉からは分け隔てていた、と同紙は語る。AFPは、国際社会が北朝鮮に対し、新たなアプローチを試みるべきだとの強い要求が高まっている、と語っているが、これはまさにその一例かもしれない。
◆北朝鮮に圧力をかけるには中国が鍵となる?
北朝鮮に圧力を加える上で、中国の対応が鍵になりそうだ。中国は、北朝鮮の唯一の主要同盟国で、北朝鮮支援で中心的な役割を果たしており、北朝鮮に核の野望を諦めるよう迫る上での鍵である、としばしば言及されるとAP通信は語る。
今回の3ヶ国による会合後、アメリカの代表、国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表と、韓国の黄代表は、28日から中国・北京を訪れ、中国の代表、武大偉朝鮮半島問題特別代表と、それぞれ個別に会談を行うことになっている(聯合ニュース、日本語)。
この中国との会談は、北朝鮮の最大の貿易相手国である中国に、経済的影響力を利用して、北朝鮮の振る舞いを抑制してほしいと説得するためだ、とINYT紙は語る。キム米代表は、「中国は6ヶ国協議の議長国として、非核化に向けて、北朝鮮がわれわれとともに努力するようにさせるという、特別な責任があることを理解していると思う」と語ったという(ロイター)。「ある意味、北朝鮮はわれわれに、圧力強化で協力する以外の選択肢を与えていない」とも語っている。