“ポピュリスト界の新たな人気者” 翁長知事、基地負担の不公平性を海外メディアに力説
普天間基地の辺野古移設に反対し、安倍政権と対立する沖縄の翁長知事が、20日に日本外国特派員協会で会見を行った。知事は日米同盟のために沖縄だけに過剰な負担を強いる国のやり方を強く批判。頑として中央政府に折れない知事に、注目が集まった。
◆沖縄を犠牲にしてきた政府を猛批判
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)のブログは、辺野古移設に反対する翁長知事は、安倍首相にとって最大の政治的頭痛の種だと表現。最近行われた両者の会談は平行線をたどり、互いに意見を変えることはなかったと報じている。
このような状況のもと開いた会見で、知事は沖縄を献身的であり続ける妻、本土を感謝のない夫に例え、地元の反対にもかかわらず、安倍首相が海兵隊基地を沖縄県内に移転させようとするのは「政治の堕落」だと主張した(WSJ)。
さらに、「小さな沖縄は、日本とアメリカという2つの大国により、まるで風に舞う葉っぱのように翻弄され、長らく苦しみを味わってきた」と知事は述べ、国土のわずか0.6%の面積しか持たない沖縄に、国内の73.4%の米軍基地を集中させているという事実を強調(AP)。沖縄県民は自発的に土地を提供したわけではなく、戦後、米軍に強制拠出させられたと説明し、国民とジャーナリストに、「もうたくさんだ」という沖縄のメッセージを送った(WSJ)。
◆アメリカに理解を求める戦略
もっとも、翁長知事は「日米同盟の重要性は認める(AP)」と述べており、反米ではない。問題視しているのは、辺野古移設があまりにも不当だと言う点だ(AP)。5月末に訪米を予定する知事は、「民主主義国のアメリカに、このアンフェアな状況を知ってもらいたい(AP)」、「沖縄県民の願いを無視することは、日米両国の評判を傷つけることになると米関係者に伝えたい(ロイター)」と語り、こう着した事態を打開するため、アメリカから直接の理解を求めようともしている。
上智大学の政治学者、中野晃一教授も、日米関係において、日本の米軍基地は重要であり、アメリカ政府も、沖縄の反米軍感情が強まることはよくないと理解すべきだと指摘。「彼らにこのリスクを認識させるために、翁長知事は声を上げ続けるべき」と述べている(AP)。
◆人気は高いが、問題解決の糸口は見えず
APは、安倍首相を「頑固」、他の政府高官を「横暴」と呼ぶ翁長知事を「調和を重視する日本にはまれな、口うるさい人」と表現する。WSJは、橋下大阪市長が政界引退を発表したことで、特に安倍政権に不満な左寄りの人々の間で、翁長知事はポピュリスト界の新たな人気者になったと皮肉る。沖縄県へのふるさと納税は、翁長氏が当選後、急増し「翁長氏を応援するメッセージ付きで寄付が来る」と県職員は話す(WSJ)。
17日に沖縄で開催された移設反対集会には、3万5000人が参加。反対運動は勢いを増しており、WSJは、地元の調査では翁長氏支持は圧倒的だと述べる。しかし、全国規模では世論は二分され、読売新聞の5月の調査では、基地問題では安倍首相の立場を支持が43%に対し、反対は42%であった(WSJ)。
基地問題では、依然として辺野古移設が「唯一の解決策」と政府は主張(WSJ)。知事は何としてでも移設を阻むと述べているが、APはできるかどうかははっきりしないと消極的な意見を示した。