安倍首相、米議会で“歴史的”演説へ 韓国系団体が現地紙に“謝罪要求”広告

安倍晋三

 安倍晋三首相は、4月26日から5月3日にかけてアメリカを訪問予定だ。ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどをまわり、日本の首相としては、54年ぶりとなる米議会での演説も行う予定だ。

◆歴史的演説
 米議会で演説を行った日本人の政治家はほとんどいない。まして、両院合同会議では前例がない、とAFPは報じる。米議会での日本首脳の演説は、安倍首相の祖父、岸信介元首相が1957年6月20日に、その4年後に池田勇人元首相が行ったのが最後だった。

 米下院議長のジョン・ベイナー氏は26日、歴史的瞬間に立ち会えることを誇りに思う、と述べ、「演説は、最も緊密な関係の同盟国から、経済と防衛の優先事項について協力を拡大する様子を、アメリカ国民が聞く機会を提供することとなるだろう」(AFP)と期待を示した。

◆謝罪の機会に、と韓国系団体
 AFPは、安倍首相の訪問について、アメリカが中国・韓国との関係を修復するよう、日本に念押ししている最中でのことだ、と報じている。中国・韓国政府が、戦後70年の節目に、どのような内容の談話を日本の首相が発表するのかに注視している様子は、海外紙が繰り返し報じている。

 AFPによると、安倍首相の訪問に反対する理由にも従軍慰安婦問題が挙げられた、と関係者が話したようだ。実際、アメリカの元日本帝国軍捕虜の団体と、韓国系アメリカ人の団体などは、安倍首相が過去の戦争への反省を示すのであれば、アメリカに招待してもよいとの主張をしている、とロイターが報じている。

 かつて日本軍の捕虜となった元米兵らによる団体『全米バターン・コレヒドール防衛兵の会(ADBC)』会長は、米国会での演説は、「日本の歴史的責任を認めるまたとない機会だ」(ロイター)としている。また、韓国系アメリカ人の団体は25日、米政治専門メディア『ザ・ヒル(The Hill)』に全面広告を出し、安倍首相は従軍慰安婦の問題も含め戦争犯罪について謝罪すべきと求めた。広告に対し、日本の外務省は、政府はこれまでの謝罪を支持すると説明し、それ以上のコメントを控えた。

 米外交問題評議会のシーラ・スミス氏は、「安倍首相にとって、今回の演説は、日本の過去について、第二次世界大戦中の行為について(日本政府が)どのような立場をとっているのか、アメリカ政治の中枢が抱える不安、懸念あるいは誤解を、和らげる絶好の場だ」とし、「安倍首相が日本の将来図を描くなかで過去の重要性と意味について考えていることを、世界の人々が直接聞くことのできる良い機会だ」(AFP20日付)と述べた。

◆アメリカの利益確保にも
 しかしながら、米政府にとって、安倍首相の訪問は、日本政府による歴史認識だけが重要なのではない。AFPは、アメリカが現在、アジアでの影響力を中国と争っていて、訪問が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の最中に行われることも指摘した。

 ジョー・バイデン副大統領と自民党副総裁の高村正彦議員は、安倍首相の訪問について話し合うため電話で話し、TPPの交渉で自動車や農産物など日米で不一致な点を「できる限り早く」解決すべきと合意した。米側関係者は、安倍首相の米議会演説によって、バラク・オバマ大統領はTPPに関する議会の賛同も得やすくなるのでは、と述べた(AFP)。

 また、中国に対抗する防衛協力の強化も期待されている、と同メディアは報じている。

Text by NewSphere 編集部