日中安保対話、4年ぶりに実施 “関係改善に一歩”と米紙

安倍首相・習主席

 日本と中国は19日、東京で、外務・防衛当局による「安保対話」を開いた。1993年に始められた日中の防衛についての会合は、2011年1月以来開かれていなかった。この4年ぶりの会合について、両国代表のどちらも日中の関係改善に期待している様子を海外各紙が報じている。

◆海外紙、関係改善の動きを評価
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、「日本と中国、関係改善へわずかに歩を進める」と題した記事を掲載した。出席した杉山晋輔外務審議官は、「話し合いを繰り返すことで、日中関係は、次第に進展していくだろう」と期待を示し、「しかし、日本も中国も、自国の防衛方針が重要であることは事実だ」(NYT)とも述べた。

 ウェブ外交誌「ディプロマット」によると、中国側は、日本が進める安全保障改革に対する不安を繰り返したようだ。中国国営新華社通信は、中国側が日本に、安倍晋三首相の進める「積極的平和主義」よりも「純粋な防衛のための防衛」戦略を維持するよう求めた、と報じている。

 これに対し日本側は、中国の軍事費について、不透明さに懸念を示した。

◆不信感の払拭
 杉山氏は、「相手国の防衛方針に対し、まだ不安はある。…これを取り除く最も良い方法は、直接の話し合いだ」(ジャパン・タイムズ紙)と述べた。劉建超外務次官補も、日中はお互いに大事な隣人で、地域の有力国だとし、話し合いは地域の平和を維持することに意義深い役割を果たすと述べた(新華社通信)。

 両国の代表はともに、話し合いの機会が増えることが、問題解決に繋がるとみているようだ。NYTは、話し合いが日本にとっては、中国の急速な軍事費増強に関して日本国内の不安を払拭することにもなり、中国にとっては、戦後の謝罪についての安倍首相の発言に対する、中国の懸念を和らげることにもなるだろう、としている。

 ディプロマット誌は、今回の動きを大きな進展だと評価した。2012年に尖閣諸島の国有化で関係が冷え込んだが、これは両国間の問題の氷山の一角に過ぎないとする。本当のところは、相手国の軍備増強にお互いが強い不信感を抱いているためだ、と推測した。今回の話し合いでは、実質的な進展はほとんどないだろうが、日本政府と中国政府の間に深い溝をうがつ防衛問題について話し合う良い機会だ、と同誌はみている。

◆軍事衝突を回避するために
 偶発的な戦争を防ぐことは、日中どちらにとっても差し迫った問題だ、とNYTは指摘する。尖閣諸島周辺では、頻繁に、両国の戦闘機や武装した船が相手に対し接近を繰り返している。今のところ、この接近は、大事に至ってはいない。しかし、専門家は、ひとつ間違えば、軍事衝突に発展する可能性があると警告している、とNYT紙は報じた。

 今回の成果としては、海や空での両国の船や航空機の遭遇に関して、ホットラインのような連絡手段を設ける準備をすすめると決めたことだ。ロイターによると、設置の期限は決まっていない。しかし、両国は、実現に向け努力することを再確認した(ディプロマット誌)。また、安保対話を年1度、定期的に開催することで一致した。

 ディプロマット誌は、日中関係の次のステップについて、3月21日に韓国で開かれる、日中韓の3ヵ国会合を挙げた。岸田文雄外務大臣によると、日本は会合に合わせて、中国、韓国それぞれと、2国間の話し合いを持つ予定だ(ディプロマット誌)。

Text by NewSphere 編集部