再エネ推進、国民負担最大2.7兆円!? 日本のエネルギー政策の課題と未来に海外注目

 東日本大震災から4年の月日が流れた。震災は日本社会にさまざまな変化をもたらした。その一つがエネルギー問題である。福島第一原発事故後、国内の原発は、安全確認などのため順次停止され、現在、50基全てが停止している。国は代替エネルギーとして、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を促進してきた。しかし、その普及が進むにつれて、電力網などのインフラ面や、コスト面で新たな問題が生じている。

◆震災後の日本のエネルギー政策では、再生可能エネルギーが重要視される
 震災後、当時の民主党政権は「脱原発」路線を掲げた。2012年9月には、野田内閣が「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すとした「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。その戦略では、再生可能エネルギーの利用拡大の目標が設定された。また、電力市場での競争促進、発電部門と送配電部門の分離といった「電力システム改革」を実施していくとした。

 政権交代後、安倍内閣は2014年4月に新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発再稼働に向けて踏み出すことが決まった。しかし一方で、原発依存度を「可能な限り低減させる」とも明記している。その方法の一つとして、再生可能エネルギーの導入が挙げられている。

 原発が稼働を停止する前には、原発による発電量は全体のおよそ3割を占めていた。現在、その穴を埋めているのは火力発電がほとんどだ。それらの燃料は、ほぼ全てを輸入に頼っており、膨大な貿易赤字を生み出すもととなっている。供給の安定を図り、エネルギーの国内自給率を高めるという戦略的観点からも、再生可能エネルギーの重要性は高く評価されている。政府はその導入を積極的に推進している。

◆爆発的に増えた太陽光発電
 再生可能エネルギーの中で、近年、特に注目を集めたのが太陽光発電だ。補助金と、手ごろな価格で効率の良いソーラーパネルのおかげで、日本の太陽光発電による電力の取引量は、過去2年間で10倍になった、と米公共放送アメリカン・パブリック・メディアの番組「マーケットプレイス」は伝える。

 2012年には「再生可能エネルギー特別措置法」が施行された。ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙はこれを、外部の発電事業者から、再生可能エネルギー(によって発電された電力)を、市価よりはるかに高い価格で購入することを義務づける法律、と説明する(「固定価格買取制度」)。その費用は、電力使用量に比例して、利用者が負担する。

◆電力会社の設備のキャパシティーを越える? コスト負担に問題も
 太陽光発電による発電量が急速に増大したために、問題が生じている。電力会社が有する現行の送電網インフラでは、太陽光発電による電力を全て受け入れることが不可能だというのだ。大部分は小規模な、何千という太陽光発電事業者からの、量の変動がある電力を取り扱うことは、電力会社にとって厄介だ、とNYT紙は説明する。「全部の電力を引き受けたら、システムが制御不能になる」と、ある電力会社の担当者は語っている。そのため、現在、電力会社が買い取りを控える動きが広がっている。

 「マーケットプレイス」は、解決策はあるものの、それには膨大な設備投資が必要となる、と語る。「誰がそれを負担するのか」という根本的な疑問がある、としている。

 再生可能エネルギー導入によるコスト増は、見逃せない問題だ。米ニュース専門放送局CNBCが伝えるとおり、すでに、化石燃料の大量輸入によって、2011年以降、電力価格は約30%上昇している。光熱費の上昇が家計を圧迫し、そのため消費活動が弱まっており、安倍首相による景気回復の取り組みに悪影響を及ぼしている、とNYT紙は語る。政府によると、現在計画中の太陽光発電設備が全て実際に建設された場合、利用者に年2.7兆円の負担がかかることになる。これは現在支払っている割増金の4倍だ、と同紙は伝える。

◆実業界からは原発再稼働を望む声
 CNBCは、電力価格の高騰により、製造業企業の収益に悪影響が及ぶのではないかという懸念があったと伝える。けれども、製造業企業の順応が素早かったため、その懸念は吹き飛ばされたようだ、としている。日本総研の藤波匠主任研究員によると、企業は節電により順応しているという。ただし藤波氏は、製造業企業は、燃料コストが将来さらに上昇することを見込んで計画を立てる必要がある、と語っている。

Text by NewSphere 編集部