インド、日本の海自飛行艇を購入へ 対中国・戦略的パートナーシップ強化と印メディア報道
国産のUS-2飛行艇のインドへの売却が決定的になったと、複数のインドメディアが報じている。大手紙『タイムズ・オブ・インディア』とニュース局『インディアTV』は、これにより日印の二国間関係が強化され、中国に対抗する準備ができたなどと報じている。
◆US-2の交渉は「決定的な段階に達した」
US-2は、新明和工業製の巨大飛行艇だ。陸上・海上の両方で短距離離着陸が可能で、4500km以上の航続距離を誇る。日印は2013年に同機に関する協力関係を話し合う共同作業部会「JWG」を設立し、技術移転・ライセンス生産を含む売買契約を模索してきた(『インディアTV』)。『タイムズ・オブ・インディア』などは、28日にもインド政府の防衛調達委員会(DAC)が、JWGで話し合われている同機の購入計画を承認する見通しだと報じている。
インド向けのUS-2の名称は『US-2i』となるようだ。JWGは、インド海軍向けに、最低12機のUS-2iを13億ドル程度で売却する提案をしている。インド防衛省関係者は、「海軍は12機のUS-2iを必要としている。そのための商業的な交渉を進める段階に来ている。沿岸警備隊も5機を要求するかもしれない」と、『タイムズ・オブ・インディア』に述べている。
『インディアTV』は、US-2の購入が「ここに来て決定的な段階に達したようだ」とコメント。「日本との関係を強化する準備ができた」としている。『タイムズ・オブ・インディア』は、「アジア太平洋地域での中国の攻撃的な態度を警戒する両国にとって、これは二国間の戦略的パートナーシップ強化の一環だ」と評している。
◆日本製潜水艦の導入は「難しい」
『インディアTV』は、インドのモディ首相が日本に対し、日本製のそうりゅう型潜水艦をインドで6隻建造する巨額のプロジェクトを打診したことにも触れている。同局はこれを、日本の「武器輸出三原則」解除に伴う動きだとしている。
しかし、「日本には軍需品を売り歩いた経験がなく、ロシア、フランス、ドイツなども参入するこの競争に加わることは難しいと考えているようだ」と、日本の参入の可能性は低いとしている。
その点、飛行艇の方は他国の参入という障害がない「直接的な政府対政府の取引」であるため、US-2iで合意に向けて順調に進んでいると同局は見ている。
◆日中印の「空母保有レース」
日印のUS-2交渉が、対中国を意識したものだと見られる中、米ビジネス・テクノロジー系ニュースサイト『ビジネス・インサイダー』は、中国、インド、日本の「空母開発競争」をテーマにした記事を掲載している。
記事は、ロイター提供の図表を元に、各国の空母の運用・開発状況を解説。中国とインドは共に旧ソ連が建造した旧式艦を運用しているが、故障が多く、とてもではないが実用的とは言えないとしている。そのため、中国は2020年代までに独自開発の空母を、インドはアメリカの技術支援で10年以内に新型空母を建造しようとしているという。
日本は、「いずも」「ひゅうが」の両護衛艦を、今は平和憲法の縛りがあるためにヘリコプターを搭載しての運用に止めているが、将来はF-35B・STOVL(短距離離陸・垂直着陸)戦闘機を搭載し、事実上の空母としての運用を目指しているとしている。同メディアは、これら日中印の状況を総合して、「アジアは空母保有レースのまっただ中にある」と記している。