イスラム国、明確な身代金要求は初めて 日本人人質事件受け、海外紙は今後に注目
◆72時間以内に2億ドルを要求
イスラム国(IS)は20日、日本人人質2人のビデオ映像を公開した。日本政府に対し、身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ、人質を殺害すると警告した。人質は、昨年拘束された湯川遥菜さんと、フリージャーナリストの後藤健二さんとみられる。
映像では、ナイフを持った戦闘員が、「日本政府と国民へのメッセージ」として、下記のようなことを語った(APなど)。
・日本の首相は、自発的にイスラム国に対する十字軍に志願し、1億ドルを供与した
・さらに、イスラム聖戦士に対する背教者の訓練に1億ドルを供与した
・よって日本人2人の命は2億ドルだ
・日本国民は、人質の命を救うために、2億ドルを支払うよう政府に迫る時間が72時間ある
◆日本政府は解放に向け全力
日本政府は、テロには屈しないと明言しつつ、人質解放に向け全力を尽くす姿勢だ。
安倍晋三首相は記者会見で、テロ行為への「強い憤り」を表明し、人質を直ちに解放するよう強く要求した。さらに、ISが言及した日本の2億ドル支援については、避難民のための食糧・医療など人道支援であることを強調した。
◆動画で身代金要求は初めてか
海外主要メディアも、この事件を大きく報じている。
CBSニュースは、ISが人質解放の対価に金銭を明確に要求したのは初めてだ、と報じている。同メディアは、昨今の米国などの空爆による、ISの苦境との関連を示唆している。英デイリー・メール紙も同様だ。
イスラエルの『ARUTZ SHEVA』は、アジアの国がISの標的になったのは初めてだと報じ、ISの戦術変化の可能性にふれている。同紙は他にも、ISは、国際報道機関における悪評を気にしており、人質の無事・健康をアピールするなどの手も打ち始めたと報じている。
またニューヨーク・タイムズ紙は、2004年のイラク人質事件を想起させる、と報じた。人道支援活動家など5人が誘拐された2事件では、解放・帰国後に、激しい「自己責任」バッシングが起きた。さらに、日本人旅行者の男性(24)が誘拐された際には、犯人集団は自衛隊のイラク撤退を要求した。当時の小泉首相は「テロに屈しない」と要求を拒否。人質の男性は殺害された。
デイリー・メール紙は、安倍首相にとっては、就任以来2度目の中東における危機だと報じている。2年前には、アルカイダ傘下の過激派がアルジェリアの天然ガスプラントを襲撃・占拠し、日本人10人を含む37人が犠牲になった。