財政収支の赤字半減へ…海外紙評価も、2020年黒字化には疑問 社会保障など歳出削減が急務
麻生太郎副総理兼財務大臣は12日、政府と与党は、過去最大となる96.34兆円の2015年度予算の概要を決めた、と述べた。新年度予算は、14日に内閣が正式に承認し、次期国会に提出予定だ。
◆2015年度は増収の見通し
2015年度の税収は、消費税増税や円安による企業の利益増加で、過去24年間で最高額の54.53兆円が見込まれている。これは、予算の約57%を賄える数字だ(2014年度は約52%)。国債発行額は36.86兆円に減少。3年連続の減少で、過去6年間でも最低だ。
これらの数字から、麻生氏は、15年度に基礎的財政収支の赤字を半減させるという目標を達成できるだろう、との見通しを述べた。
防衛費は、3年連続で増加し5兆円(前年比2%増)、公共工事予算は、前年度と同じく6兆円となるようだ。社会保障費は、1兆円増加の31.5兆円となり、内容は高齢化に対応するための医療費や育児支援の予算を増額している。
国債の利払い費などの国債費は、約2000億円増え、23.5兆円となった。
◆次の目標は、2020年の財政黒字化
麻生氏は、「予算の編成は、地方経済の再生や社会保障費の向上など、日本が直面している問題に適切に対応するものだ」「来年度のための税改正と合わせて、財政を強化しながら経済を再活性化する予算を実行する」(ブルームバーグ)と述べた。
フィナンシャル・タイムズ紙(FT紙)は、「日本は財政目標達成のための軌道に乗った」と見出しをつけ、政府の政策を評価している。
しかしながら、財務省の掲げる、2020年度までに財政の黒字化という目標は、いまだに野心的なものだ、とロイターは指摘。財務省内部の関係者が、2020年までに目標を達成するためにはより厳しい削減が必要だ、と述べたことをFT紙は伝えている。
FT紙は、政府が夏までに、社会保障費の大幅な削減を含む長期的な予算強化策を作成するだろう、と報じている。
◆柔軟な予算が功を奏した
財政のコントロールは、安倍政権の重要な課題だ。農林中金総合研究所の南武志氏は「安倍首相にとって、地方選挙を前に予算を大幅に削減するのは難しいことだ」と予算発表の前に述べた。「政府は、主要な予算では保守的なようだ。経済を押し上げる必要がある時はいつでも、迷わず追加予算を組む」(ブルームバーグ)
安倍晋三首相は、自身が「柔軟な」年度予算と呼ぶ方針を進めてきた、とFT紙は述べる。計22兆円にのぼる一連の追加予算を出動し、10月に予定されていた10%への消費税引き上げを延期した。12月には経済政策実行の是非を問う、解散総選挙を行い勝利した。
首相の成長に重点を置いた取り組みは、財務省の役人や閣内でも不安があった、とFT紙は指摘する。彼らは、負債削減のため、より積極的な対策を講じるべきだと考えていたからだ。
しかし、税収は比較的良好だ。9月までの6ヵ月間実質的な景気後退に突入したにも関わらず、前年度よりも約9%増加した。また、政府は、消費税を増税した一方で、今後2年で、法人税を3.29%減らす計画だ。