日本、哨戒機を英国に売り込みか…ロイターがスクープ 武器輸出本格化に注目
ロイターは7日、日本政府が国産哨戒機「P-1」をイギリスに売り込んでいる、とスクープした。「武器輸出三原則」が緩和されたことにより、日本の軍事産業の本格的海外進出が始まるのでは、と海外メディアは注目している。
◆日本の武器輸出本格稼働か?
P-1哨戒機は、海上から潜水艦などを探知する監視航空機で、川崎重工が製造。すでに厚木航空基地に配備されており、ロイターによれば、海上自衛隊は今後5年間で約20機の購入を予定しており、1機あたり200億円ということだ。
日本政府は4月に、「武器輸出三原則」に代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定。以後、オーストラリアへの潜水艦売却、水上機のインドへの輸出など、海外市場開拓を目指してきたとロイターは説明する。また、調達コストを下げ、かつ軍事力を増強する中国に対抗するため、自衛隊強化の助けとなる提携取引を通じ、日本の防衛サプライヤーが海外市場へ参入することを、安倍首相が望んでいるとも述べている。
◆イギリスの現状
ロイターによれば、日英の担当者は昨年7月、ロンドン近郊で開かれたファンボロー国際航空ショーで防衛装備品協力について協議しており、この時にP-1購入の件を日本側が話題にしたと言う。
イギリスには、もともと哨戒機として国産のホーカー・シドレー(現BAEシステムズ)のニムロッドがあったが、2011年に退役させている。後継として、BAEシステムズから新型機9機の購入を決めていたが、遅延と費用の大幅超過で、国防費削減を目指すキャメロン政権により2010年に注文がキャンセルされた。
英テレグラフ紙によれば、哨戒機欠如の穴を埋めるため、イギリスは同盟国に頼っており、先月もスコットランド沖でロシア潜水艦と疑われるものを捜索するため、同盟国に航空機4機の出動を要請したことを国防省が認めている。
冷戦時代は、ニムロッドでソ連の海底活動を追ったこともあるイギリス国防省は、哨戒機の不在は防衛費カットが残した最大のギャップの一つと発言。イギリス政府も、哨戒機購入の意志を示しているが、5月の総選挙前に、決定がなされることはないと関係者は見ている(テレグラフ紙)。
◆ライバルはボーイング
イギリスの哨戒機購入の契約は10億ドル以上と言われる案件だが、すでにアメリカで製造、運用が開始されたボーイングのP-8が低リスクで最有力、と防衛関係者は述べる(ロイター)。
米海軍は、昨年2月に1機1億5000万ドル(約180億円)で16機のP-8の購入契約をしているが、日本が英軍に合わせた改良型P-1をイギリスと共同開発し、競争力ある価格と性能をオファーすれば、十分に対抗できる選択肢となるとロイターは報じている。
日本のある情報筋は、たとえイギリスが購入しなくても、P-1は選択肢の一つとして取り上げられたことで、国際的に注目を集めると指摘。他国に向けての十分なアピールとなることを示唆した(ロイター)。
なお、ロイターの取材に対し、防衛庁、英国防省、川崎重工、ボーイング(東京)のいずれも、回答できないとしている。