イスラエル、日本との経済連携強化計画を発表 安倍首相の積極姿勢に現地紙も期待
2014年5月にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が訪日して以来、日本とイスラエルの関係は急速に深まっている。今月、安倍晋三首相がイスラエルを訪問するにあたり、イスラエル政府は日本との経済連携を強化する計画を発表した。
これを受け、イスラエルメディアやアメリカの防衛ニュース・サイトが、その背景や影響を分析している。
◆経済と軍事がねらいか
ヘブライ大学名誉教授であるベン=アミ・シロニー氏は、安倍首相はイスラエルとの関係強化により、日本の産業界のイノベーションを喚起し、経済発展をねらっているとみている。また同氏は、北朝鮮対策などで軍事力強化を目指す安倍首相にとって、イスラエルの技術は価値あるものだと述べる(タイムズ・オブ・イスラエル)。
同紙は背景として、反ユダヤ主義とは無縁に近い日本では、ユダヤ人やイスラエルが好意的に受け入れられている、と指摘した。さらに、米国のシェールオイル増産などにより、日本でアラブ諸国の地位が相対的に弱まっている影響もあると示唆した。
◆輸出額や協同研究開発助成の5割増を目指すイスラエル
イスラエルのメディア『Arutz Sheva』は、イスラエルがアジアの経済大国、特にインド、中国、日本との連携強化を図っていることを伝えている。欧州ではパレスチナ国家承認の動きが広まり、アメリカではイスラエルへの経済制裁をちらつかせる報道が出回っていることが背景にある。
日本との経済連携を強化する計画の具体的な中身としては、まずは、イスラエルが2020年までに日本への年間輸出額を50%増加させることが挙げられている。
そのほか、イスラエルは政府全体で日本との関係強化を進める。経済省は、貿易を拡大するため東京に次いで新たに大阪に貿易事務所を設置する。財務省は、投資促進の合意書の調印に向けた交渉を進め、観光省は2017年までにイスラエルへの日本人観光客を45%増加させる見込みだ。
科学技術宇宙省は日本との合同研究、特に宇宙分野での助成50%増加を目指す。外務省は、今後3年間で日本からの若手リーダー500人の訪問を計画。1週間の訪問で、イスラエルの経済や文化を学ぶ。そのほか、交通省で交通インフラ開発、農業省で代替燃料開発の協力が予定されていることを伝えている。
◆軍事防衛関連は微々たる規模か
アメリカの軍事防衛ニュース・サイト『ディフェンス・ニュース』は、今回の日本とイスラエルの関係強化で、イスラエルから日本への防衛関連輸出の急増はないと見ている。
イスラエル政府の声明では、両国の政府・産業界の交流は急拡大しているとある。しかし同サイトは、イスラエルの日本への防衛関連輸出額は年間70億ドルと微々たるものだと報じる。「イスラエルがインドや韓国、その他の東アジアのパートナー国と享受しているような防衛関連の貿易関係と近い代物を養成するには、長い時間がかかるだろう」と、イスラエルの防衛関係者は語っている。
ただ、両国間の防衛関連での協力に相当な可能性があると関係筋が見ていることも報じている。