海外報道:安倍新内閣の課題は「経済、安保、中韓外交」 「タカ派」新防衛相にも注目

安倍首相

 24日に召集された特別国会の衆参両院本会議で、安倍晋三氏が第97代総理大臣として選出された。同日、首相は閣僚を任命し、皇居での首相親任式と閣僚認証式を経て、第3次安倍内閣が発足した。

◆景気回復が引き続き最優先課題
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、安倍首相にとって、最も差し迫った課題は、2四半期連続のマイナス成長の後で、日本経済を再び成長路線に乗せることだろう、としている。

 首相は衆院選後、日本経済の再生が最優先事項だ、と語っている。内閣発足後の記者会見でも、「アベノミクスの成功を確かなものとしていくことが最大の課題だ」と語っている(NHK)。

◆集団的自衛権行使を可能にする法整備で、新防衛大臣は安倍首相の強い味方?
 報道によると、安倍首相は当初、全閣僚を再任する考えでいたが、政治資金問題で野党側から追及を受けた江渡聡徳・前防衛大臣が辞退したため、中谷元・元防衛庁長官を防衛大臣に任命した。他の17閣僚は皆、再任である。このため海外メディアの注目も、この防衛大臣人事に集まった。

 WSJ紙は中谷大臣について、日本の防衛政策の拡大に賛成する、保守派の元自衛隊将校(幹部自衛官)だとする。「タカ派」とも形容している。ロイターは、中谷大臣は、敵からの攻撃が目前に迫っている場合、敵基地を先制攻撃する能力を日本が持つことに賛成している、と伝えた。

 新安倍内閣では、安全保障法制の整備も、重要な課題となると見られている。今年7月には、集団的自衛権行使を可能にするための憲法解釈の変更が閣議決定された。しかし、実際に可能にするための法整備はこれからだ。安倍首相は経済政策と並び、そのことも追い求めるだろう、とブルームバーグは報じる。WSJ紙は、中谷大臣がその先鋒となると予想される、としている。

 中谷大臣を指名したことで、中国から非難を招く可能性がある、とロイターは指摘した。

◆「不人気政策」、いつ実施に取りかかる?
 その法整備については、タイミングが極めて重要となる。日米は現在、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の見直しを進めている。19日の日米共同発表では、「日本の法制作業の進展を考慮しつつ、明年前半における指針の見直しの完了に向けて取り組む」とされている。(それに間に合わせるために)「遅くとも春の終わりごろまでに、一連の法案が提出されなければならない」と、米シンクタンク「スティムソン・センター」の辰巳由紀主任研究員は語る(ブルームバーグ)。

 しかし、来年4月には統一地方選が実施される。安倍内閣があまり早く法案を提出すると、選挙で自民党は激しい反発を受けるかもしれない。原発再稼働、TPP参加といった他の「不人気政策」でも同様だ。上智大学の三浦まり教授(政治学は、「おそらく首相は、論議を呼ぶ法案はすべて、(4月の)地方統一選後に提出するでしょう」とブルームバーグに語っている。

◆中国および韓国との関係改善は?
 WSJ紙は、中国・韓国との関係の冷え込みも課題と指摘している。来年8月の終戦記念日に出されるとみられる「安倍談話」が、内容によっては関係改善に寄与する可能性がある、とも指摘される。

一方、首相が万一誤りをしでかせば状況は悪化する。辰巳氏は、安倍談話について、歴史修正主義者の見解を反映したものになるという強い懸念が、すでに存在する、とブルームバーグに語る。

◆来年頭はTPP交渉に注力?
 安倍内閣は来年頭の3~4ヶ月、TPP交渉を重要な政策として推し進めるだろう、と国際基督教大学のスティーブン・ナギ准教授がブルームバーグに語っている。ただしその進展は、日米双方の国内政治次第であるという。

 今後、安倍首相には、自民党内のTPP反対派との交渉が控えている。ナギ准教授は、オバマ大統領が通商交渉での強い権限を米議会から与えられれば、自民党内の各派閥も、首相と折れ合うことを余儀なくされるようになるだろう、と語っている。

Text by NewSphere 編集部