1票の格差が利権政治を助長…日本の選挙の問題点、海外メディア指摘
衆議院選挙が2日に公示され、14日の投開票に向けて選挙戦がスタートした。これに先立ち、海外メディアが、日本の政治や選挙制度に存在する問題について解説している。
◆「1票の格差」が「違憲状態」にある、という最高裁の判決
ブルームバーグが取り上げたのは、国政選挙における「1票の格差」の問題だ。
26日、最高裁は、2013年7月の参院選について、法の下の平等に照らして「違憲状態にあった」との判決を下した。同選挙では、議員1人当たりの有権者数が、最も少ない鳥取県で約24万1千人、最も多い北海道では約114万9千人となり、その格差は4.77倍だった。
最高裁は昨年、2012年の衆院選についても、最大で2.43倍の格差があり、「違憲状態」であるとの判決を下していた。この判決に先立って、格差の縮小を図るため、衆議院議員の定数を480人から475人に「0増5減」することが国会で決まっていた。今回の衆院選から適用されるが、それでも2倍を超える格差が生じる(NHK)。「違憲状態」が合理的期間内に是正されなかった場合、「違憲」となる。
◆もしこの状態が是正されたらどうなる?
ブルームバーグはこの問題を、都市部と、人口減少の進む地方の間の、政治的影響力の不均衡として捉えた。地方有権者の国政に与える影響力が、(人口比以上に)大きくなっているということだ。
この状態は、安倍首相にとってはプラスにもマイナスにも働くという。プラス面は、自民党は地方で強いため、選挙戦で有利となる。マイナス面は、安倍首相が規制緩和、市場開放を推進するのを地方の有権者が嫌い、その効力を弱める可能性がある、ということだ。TPPへの参加などがこれに当たる。
モルガン・スタンレーMUFG証券のロバート・フェルドマン経済調査部長は、「都市部は地方より、いささか市場支持的な傾向があり、もしも議席が都市部に(より多く)再配分されたなら、おそらくもっと規制緩和の進んだ構造になるでしょう」とブルームバーグに語っている。
自民党は今度の選挙戦で、地方再生を政策の重要な柱としている。しかしそれでも、地方から都市部への人口流出は続き、選挙区間の「1票の格差」は悪化する、とフェルドマン氏は語っている。
◆日本の政治につきまとう「政治とカネ」の問題
オーレリア・ジョージ・マルガン教授(ニューサウスウェールズ大学とオーストラリア国防大学・日本政治学)は、ディプロマット誌への寄稿で、日本の政治には「金権政治」と「政治とカネ」の問題がつきまとうことを論じている。ただし同教授は「金権政治」を「利権政治」の意味で使っている。
利権政治は、政治家が業者などに政治的便宜を図る見返りに、金銭を受け取るというものだ。この利権問題で政治家を有罪にすることは、日本ではほとんど不可能だと判明している、と同教授は特に理由を示さず断言している。
最近では、「政治とカネ」の問題のほうがよくある、と同教授は語る。政治資金規正法に違反しているかどうかであり、検察にとってはこちらのほうが立件・起訴しやすいという。
安倍内閣においても、小渕優子元経済産業相、松島みどり元法相など、「政治とカネ」の問題が頻発した。これらのスキャンダルの大部分は、日本の報道機関、特に週刊誌による調査のおかげで明らかになった、と同教授は語る。週刊誌は、権力のある政治家の金銭問題を深く追求することで有名である、と語っている。
日本の政治に、これほど利権と「政治とカネ」の問題がまん延している理由について、ある国会議員秘書が提示する説を同教授は紹介している。それによると、問題を起こす政治家は皆、国民の代表たる「政治家」として振る舞うのではなく、「政治屋」として振る舞っているのだという。一番ありきたりなパターンは、政治家が地元企業からの金銭と引き換えに、地元選挙区に公共事業を持ってくるというものだ。そしてそれが、国の負債が1000兆円もあるにもかかわらず、公共事業費が膨らみ続けている理由である、と同教授は断定している。
◆世襲議員は出馬のハードルが他より低い?
エコノミスト誌は、日本の政界で世襲議員が増え続けていることを取り上げている。同誌によると、自民党所属の国会議員のうち、5分の2以上は、かつて親類が国会議員を務めていたという。また内閣の19人のうち8人には、国会議員か地方議員を務めた親類がいるという。
親類の跡を継ぐことには、多大なメリットがある、と同誌は語る。後援会が初めから用意されていること、知名度が初めから高いことなどだ。また、もし落選してしまったとしても、選挙区における一族の影響力が強いため、落選期間をしのぐための地元企業での職が確保できる。
数年ごとに身分が不安定になるというのは、新規参入者にとっては大きなハードルだ。そのためもあって、今度の選挙で、民主党は十分な数の立候補者を見つけるのに苦心しているという。
世襲議員の問題点として、自分たちを選出した利益団体に異を唱えることが難しい、と同誌は語っている。ただ、これは世襲にかぎらず、支持母体が明確で強力な議員にも当てはまるのではないか。