“米軍への挑戦” 翁長氏の沖縄県知事当選で、米紙衝撃 辺野古移設の行方も不透明に
16日に行われた沖縄県知事選で、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏が、自民党推薦の現職、仲井真弘多(なかいまひろかず)氏に10万票の大差を付け当選した。
◆海外メディアは日米同盟に注目
ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、普天間移設に反対で、基地の沖縄からの撤去そのものを求める翁長氏が当選したことは、日米両政府に打撃を与えたと報じている。
ワシントン・ポスト紙(WP)も、沖縄の有権者が、新基地建設を阻む翁長氏を選んだと伝え、同氏が公約を実行できるかは明らかではないが、彼の大勝は、日米間の基地移転計画を複雑にすることは確かだと述べている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、翁長氏圧勝の一因は、長らく基地経済に依存してきた沖縄が、観光業の発展で、米軍に挑戦する自信をつけてきたことだと指摘。しかし中国の台頭で日米同盟を強化しようとする日本の努力が、妨げられる可能性もあるとしている。
◆埋め立て承認無効化も視野に
WSJは、普天間は日米間の触れられたくない話題だったと説明。騒音や事故で批判が絶えなかったところへ、1995年にアメリカ兵が12歳の少女をレイプしたことがきっかけで基地反対運動が拡大し、日米両政府が1996年に辺野古キャンプシュワブ沖への移設に合意した。
しかし、地元住民の反対で計画はストップ。昨年12月に、当時は移設反対だった仲井間知事を安倍首相が説得し、3000億円以上の公共事業プロジェクトを県に約束して、辺野古埋め立て計画を承認させ、事態は進展するかに見えた(NYT)。
ところが、今回翁長氏が圧勝。同氏は選挙前、WSJの取材に対し、当選すれば埋め立てに関する手続きを検証し、もし法的問題があれば、承認の無効化を求めると語っていることから、計画が迷走することにもなりかねない。
安倍政権としては、国家安全保障の問題を一県が決めることはできないとし、移設継続の立場を変えていない(WP)。
◆名護市長も歓迎
辺野古のある名護市の稲嶺市長は移設に反対で、翁長知事誕生を歓迎。計画を止めるため、どんな力も使うと表明し、すでに建設現場への港湾、道路へのアクセスを拒否している。これに対し政府は、埋め立て現場に土砂を運ぶベルトコンベアーを作る案に変え、国道を通りトラックで土砂を運ぶ、市長の承認不要な代替え案を出した。稲嶺氏は、政府の計画では毎日トラック592台分の土砂を182日間運ぶことになると批判的だ(WP)。
沖縄県によれば、基地経済への依存度は、1972年には15.5%であったが、現在は約5%ほど。辺野古の環境問題専門家は、埋め立ては海の生態系を壊すと危惧しており(WP)、観光客が増えるなか、未来の観光地としての辺野古の可能性を破壊すると翁長氏も述べている(WSJ)。
「沖縄本島の18.4%を占める基地が返還されなければ経済発展はない(WSJ)」とする新知事の、基地への対応が今後注目される。
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