安倍首相、欧米に先駆け対露関係改善へ 中国警戒と“個人的信頼関係”が奏功か

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)のため北京入りした安倍首相は、9日夜、ロシアのプーチン大統領と会談し、関係改善に合意した。今後は、ウクライナ問題で停滞していた日露関係の進展が期待される。

◆待望の首脳会談
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、今回の会談は、2012年安倍首相が政権に返り咲いてから7回目の二国間会談で、両首脳はエネルギー、環境、安全保障協力、北朝鮮の核兵器開発への相互協力などについて話し合ったと報じている。

 同紙は、ウクライナ問題で日露関係の進展が途絶えたことは、両国間の領土問題解決と経済協力を深めることが、外交上の最重要課題の一つと見る安倍首相をいら立たせてきたと説明。現在も、日本はウクライナ問題での制裁をロシアに課しているものの、両首脳は関係改善に合意したと伝えている。

◆平和条約締結なるか?
 今回の会談で注目すべきは、日露平和条約への取り組みの継続が、話し合われたことだ。ブルームバーグは、安倍首相が、平和条約締結は、日本経済に「きわめてポジティブな効果」をもたらすと語ったことを紹介している。

 ワシントンにある外交問題評議会のジャパン・スタディーズの上席研究員、シーラ・スミス氏も、「もしプーチン氏と安倍氏が領土問題を解決すれば、平和条約はついに締結される。そして安倍氏は、日本の最も大きな第二次大戦の未解決の遺産の一つを、取り除くことになる」と指摘。「これは、中国の影響が拡大するロシア極東での協力のため、遥かに大きな可能性へのドアを開くことになる」と述べる(ブルームバーグ)。

 WSJは、東アジアで中国の影響が拡大することは、日露両国にとってはいやなものだと指摘し、ロシアは日本にとって、中国に対する均衡勢力だと述べる。さらに、日本はロシアの極東におけるエネルギー開発への参加を望んでおり、ロシアがすでに、日本にとっての主要なエネルギー供給国となっていることも指摘。ウクライナ問題による制裁が長引けば、ロシアの燃料輸出の能力が損なわれるのでは、と日本が心配していると述べている。

◆個人の関係は良好
 ブルームバーグによれば、会談中、プーチン大統領は、ロシアのウクライナ問題での立場を、「かなり詳細」に安倍首相に説明したが、ロシアへの日本の制裁については、議論されなかったという。

 ロシアのイタルタス通信は、モスクワで日本の武道の祭典を訪れたというプーチン大統領に、「柔道家としてのあなたの日本の武道についての知識は、日本自体への深い理解を意味し、日露関係の更なる発展と強化には大きなプラスだ」と安倍首相が述べたことを紹介。首相は大統領をファーストネームで呼んでいたという。

 両首脳はそれぞれの誕生日に電話をして祝福。先月はミラノでも面会しており(ブルームバーグ)、個人的な関係は良好なようだ。ウクライナ問題で延期となったプーチン大統領の訪日も、来年に予定されており、日露関係に新たな展開が期待される。

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Text by NewSphere 編集部