朝日の慰安婦報道、日本非難決議に「影響せず」と米識者 過剰な朝日叩きに海外疑問
安倍首相が3日の衆院予算委員会で、日本が「国ぐるみで(女性を)性奴隷にしたとのいわれなき中傷が世界で行われている」と発言したのを受け、韓国外務省当局者は5日、韓国・聯合ニュースの取材に答え、「深刻な懸念を表明する」などと批判した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)など各国メディアも、慰安婦問題を見直す最近の日本の動きを批判的に取り上げている。
◆韓国メディアが猛批判
安倍首相は、「『日本が国ぐるみで性奴隷にした』といういわれなき中傷が世界で行われている。(朝日新聞の吉田証言に関する)誤報でそういう状況が生み出されたのも事実だ」と述べた。そのうえで、「これまで以上に戦略的な対外発信の強化が必要だ。いわれなき中傷には『そうではない』と発信することが大事だ」との見解を示した。
これを受け、韓国外務省の当局者は「最近、日本内で慰安婦動員の強制性を否定するような動きが続いている。深刻な懸念を表明する」などと述べたという。その上で、「慰安婦問題の本質をごまかし、過去の過ちを縮小・隠蔽しようとしても、歴史の真実は隠せず、国際社会の厳しい批判を招くのみだ」と批判した。
これを伝えた聯合ニュースは、「(日韓)両国関係に改善の兆しが見え始め、実現の可能性が高まっている首脳会談開催に(安倍首相の発言は)悪影響を与えるとみられる」と記す。中央日報も、「退行的な発言」「朝日新聞の誤報事件を口実に戦争犯罪と不幸な過去の歴史を否認しようとするのならば、手のひらで雨を防ぐようなものだ(無駄な抵抗だ)」などと批判を連ねている。
◆日本の責任を認めた米下院の決議は「変わらない」
WSJも7日付で、朝日の「誤報」に対する安倍政権や保守系メディアの反応を批判する記事を掲載した。記事は、2007年に米下院を通過した慰安婦問題に対する日本の国家的責任を認めた決議文の作成に携わった4人のアメリカの識者に取材したものだ。
「識者」は、ジョン・ホプキンス大学のデニス・ハルピン、アジア・ポリシー・ポイントのミンディ・コトラー、ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ、国際戦略研究所のラリー・ニクシュの4氏。揃って、朝日新聞が吉田証言をもとにした記事を撤回した今も「日本は、軍による明らかに強制的な行為に対する歴史的責任を正式に認め、謝罪しなければならない」という決議の本質は変わらないという見方を示した。
記事は、9月11日付の毎日新聞が、決議文作成に際して4人に渡された資料に吉田証言が含まれていたと報じたことにも触れている。これに対し4氏は、「確かに毎日新聞の取材を受けたが、吉田証言やそれに関する朝日報道は決議文の内容には影響しなかった」とWSJに答えている。
◆「ドイツで同様のことがあれば大騒ぎになる」
一方、日本でイスラム系向けの英語ニュースを発信する「新月通信社」のマイケル・ペン元北九州大学教授は、「アルジャジーラ」のニュースサイトに、最近の日本の「右翼勢力」や「保守系メディア」による朝日新聞攻撃などを批判するオピニオン記事を寄稿した。
ペン氏は、先月朝日新聞本社前で行われたデモの様子を描写。デモ隊の男性が拡声器を手に「朝日が慰安婦について語ることは完全に捏造だ。全くの嘘だ」と叫び、着物姿の女性が「朝日は日本を悪い国に仕立て上げ、世界中に広めている」と批判したとしている。
そのうえで同氏は、「世界の多くの識者はそうした見方には同意しない」と反論し、ドイツ紙の東京特派員の次のような言葉を紹介している。「ドイツの政治家が、ユダヤ人強制収容所に関して一部偽証があった、だから何も起きなかったと言うのを想像できるだろうか?もしそんなことがあれば世界中で大騒ぎになるだろう」
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