尖閣紛争回避に一歩 日中「軍事ホットライン」構築へ…海外紙も歓迎
日本、中国両政府は23・24日、海洋問題に関するハイレベルの実務者協議を中国・青島市で行い、偶発的な軍事衝突などを回避するための「海上連絡メカニズム」を構築する協議を再開することで合意した。尖閣諸島の領有権争いを沈静化する第一歩との見方も強く、各国メディアがその行方に注目している。
【偶発的な紛争を回避するための「軍事的ホットライン」構築へ】
中国外務省の発表を伝えた中国国営新華社通信によると、会議は両国の外交・防衛関連部局の実務担当者らによって23日と24日の2日間に渡って行われた。日本側からは外務省の下川真樹太・アジア大洋州局審議官が、中国側からは外交部(外務省)の易先良・国境海洋事務局副局長が代表として出席した。
この海洋協議は2012年1月に始まり、同年5月に2度目が開かれた。その後尖閣問題や両国の外交関係の悪化により中断していた。議題の中心となっている「海上連絡メカニズム」は、特に両国が日常的に軍艦や軍用機を派遣している尖閣諸島周辺で懸念されている偶発的な軍事衝突を回避するための、連絡手段の仕組みのこと。今回は、それを作り上げるための話し合いを再開することで合意し、次回の協議を日本で年末か来年初めに行うことを決めた。
ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、「アメリカはしばしば、日米安保条約の当事国として、日中の紛争に巻き込まれるのを避けるために、両国に偶発的な事故や小さな判断ミスが衝突に結びつくことを防ぐ軍事的なホットラインを設ける必要があると指摘してきた」と記す。今回協議を再開した「海上連絡メカニズム」は、まさにこの「軍事的なホットライン」に当たると言えよう。
【中国側から経済面でも対話の「早期再開」を望む声】
WSJは、海洋協議の再開を日中の「和解の機運」の一つと捉える。そして、この機運が続けば11月に北京で開かれるAPEC会議の場での安倍首相と習近平国家主席との首脳会談の「ドアが開かれる可能性がある」と論じている。
また、ロイターは、経済関係においても中国の汪洋副首相が日本とのハイレベルな対話を「早期に再開」することを望んだと報じている。日本企業のトップらで作る「日中経済協会」の200人規模の訪中団と24日に面会した際に、そうした主旨の発言をしたという。これを伝えた訪中団の広報担当者は、汪副首相とは「日中関係は世界にとっても重要だという意見で同意した」とも述べたという。
【榊原経団連会長「中国への投資を増やしたい」】
ロイターは、訪中団にも名を連ねている榊原定征・経団連会長のコメントも掲載している。それによれば、榊原会長は中国経済がスローダウンしていることは認めつつ、それでもその力を信じているとし、「中国への投資を増やしたい」と述べている。
榊原会長はまた、「特に今年、日中の貿易と投資が減少した」とし、「現在の雰囲気は日中協力のためのコミュニケーションが止まった状態だ。これは経済のみならず外交関係にも影響している」とロイターに見解を示した。
一方、日中海洋協議では、両国関係機関のコミュニケーションの仕組み(「海上連絡メカニズム」)の構築は「最優先課題」だという点で、合意に達している(ブルームバーグ)。
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