ドイツと比べ、日本は努力不足? 武器輸出に中韓が猛反発の理由、海外識者が分析

 集団的自衛権の行使容認など変化する日本の防衛に、海外各紙が独自の論評を繰り広げている。武器輸出や攻撃能力の保有などが検討され、軍事能力が拡大傾向に向かう中、各国からの注目も高まっている。

【全面保有か、部分保有か】
 ロイターは、日本が「敵基地攻撃能力」保有について、アメリカと非公式の話し合いを持っていると伝えている。

 同メディアが日本側の当局者から得た情報によると、現段階では、具体的にどのような武器・装置を持つかという点まではまだ話が及んでいないとのことである。また、日本のこうした動きは中国の怒りを買う点の方が注目されるが、むしろ政府の目的は北朝鮮対策が主であるという。

 攻撃能力の保有は、日本にとって新たな「膨大な費用への扉をひらく」と防衛の専門家は語っている。そのため、そうした能力の全面保有ではなく、米国が保有する分の一部を共有する、というのも選択肢として考え得るという。

【近隣国に反発される日本、されないドイツ】
 またAFPは、日本が純国産の戦闘機製作を検討している、と報じている。これは1980年代にも一度模索した試みだが、アメリカの反対に遭い、結果として日米共同開発のF−2戦闘機が生まれた。しかしそれも2年以上前に製作を終了しており、現在自衛隊が使用中の同機も2028年頃には引退する予定である。そのため、政府は再度純国産への道を探っている、と同メディアは伝えている。

 この記事も然りだが、こうした動きはほぼ常に「中国の反発」とセットで報道される。毎度おなじみの構図が依然続く理由について、米クリスチャン・サイエンス・モニター紙(CSM)のピーター・フォード氏は、ドイツと日本の戦後を比べて論じている。

 これまでドイツは、世界第3位の武器輸出国でありながら、紛争地帯には殺傷兵器を供給しない方針を貫いてきた。しかし、8月にそれを覆し、クルド人民兵組織に殺傷能力の高い武器を供給することを決定した。一方日本は、4月に武器輸出三原則を見直し、現在、武器輸出についてオーストラリアおよびインドと交渉している。そのような動きに対し、それぞれの近隣諸国の反応は真逆だという。

 ヨーロッパでは、近隣国からの反対はない。あるのは国内世論の反対だけだ。最近の調査によると、ドイツ国民の58%がクルド人への武器供給に反対しているという。

 国内世論の反対が多いのは日本も同じだ。武器輸出については、66%の日本人が反対という結果が2月の調査で出ている。しかし反対は国内だけでなく、中国、韓国といった近隣国からのほうが高い、という点が大きな違いだ。

 ドイツの近隣国からこのような懸念の声は挙がらない。それは「政府が同盟国と関係を密に保っているからだ」とボン・インターナショナル・カンヴァセーション・センターのコンラッド・シェター氏は指摘する。かつ「ドイツの安全保障優先順位は他の欧州および米国と同じであるため、ドイツが自国の目的のみで暴走することは考え難い」というのが近隣国の反発を買わない理由だという。(CSM)

【日本政府がやるべきことは】
 日本もアジアで同様の安全保障貢献を模索しているが、ドイツがナチス時代を乗り越え近隣国とうまく仲直りしたようには過去を清算できていない、と英ワーウィック大学のクリス・ヒューズ教授はCSMに語る。同氏によると、日本政府に足りないのは「自らの行動と目的に関して近隣国を安心させる努力」だという。

 衆議院安全保障委員会理事の長島昭久氏は「世界情勢は極めて不安定で、アメリカの影響力も下がってきているという点を考えれば、他の国は自国で安全保障に責任を持たなければならない。日本とドイツは、ついにその責務を受け入れたのだ」と語っている。(CSM)

 ドイツと日本が直面している脅威は異なるが、それでも人々の関心を「過去ではなく、未来に」向けさせなければならないのは同じだ、と同記事は訴えている。

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Text by NewSphere 編集部