「安倍首相が戦犯哀悼」朝日報道が世界に拡散、中韓反発へ 日中首脳会談見込みに暗雲?
福田康夫元首相が27日、都内で講演を行い、7月に北京を極秘訪問して中国の習近平国家主席と面会したことを、初めて自らの口から明かした。日中首脳会談の開催に向けた調整が主な目的だったが、福田元首相は中国側も実現に積極的だと当時の印象を交えて語った。
しかし、その講演の同日、日中関係の新たな火種も浮上した。27日付の朝日新聞が、安倍首相が4月に開かれた第2次世界大戦の戦犯の追悼法要に、哀悼メッセージを送ったと報道。これを受けて中国外務省が非難声明を出し、ニューヨーク・タイムズ(NYT)、韓国の中央日報などが一斉に批判的に報じた。
【11月の首脳会談開催に向け、着実に前進しているが・・・】
福田元首相は、7月下旬に北京を訪問し、習主席をはじめとする中国高官と面会した。ブルームバーグによると、福田元首相は講演で、習主席はその際、首脳会談を行わない特別な理由は何もなく、中国は門戸を開いているという主旨の発言をしたと語った。そして、11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場を借りる形で実現すべきだと強調した。
両首脳の会談は就任以来行われていない。福田元首相の北京訪問の後には、8月10日にミャンマーで日中外相会談が開かれ、首脳会談に向けてじわじわと前進しているという見方が強い。安倍首相自身も、実現に前向きな発言をしている。また、ブルームバーグは、共同通信の報道を引用し、習主席の側近の李小林氏が来月、調整役として日本訪問を検討してると伝えている。
【朝日報道をきっかけに中国が非難声明】
福田元首相は講演で、11月の首脳会談が実現しなければ日中関係はかなり厳しい状況になるとも述べた。同日の朝日報道は、早速その障害となる問題を提示した形だ。
それによれば、安倍首相は、4月に和歌山県・高野山の「昭和殉難者法務死追悼碑」(戦犯として刑死・獄死した1180人の追悼碑)前で行われた毎年恒例の式典追悼法要に、「今日の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉職者の御霊に謹んで哀悼の誠をささげる」というメッセージを書面で送った。
中国はすぐさま報道に反応。外務省が同日深夜、泰剛報道官を通じて非難声明を発表した。声明は、「日本は近隣諸国と国際社会の信頼を得るために侵略の歴史の結果生じた義務を真摯に受け入れ、明確な行動を取るべきだ」などとしている(新華社)。一方、菅義偉官房長官は首相が法要にメッセージを寄せたのは事実だが、私人として行ったもので、政府は1952のサンフランシスコ講和条約を受諾することにより、戦犯を裁いた東京裁判の結果を受け入れていると、記者団に述べた(NYT)。
【韓国紙「安倍首相の嘘が証明された」】
中国以外のメディアも、安倍首相のメッセージの件を朝日報道を引用する形で一斉に伝えた。
法要は、元旧日本軍将校らが立ち上げた「追悼碑を守る会」と、旧陸軍士官学校や防衛大のOBで作る「近畿偕行会」の共催。NYTは「主催者たちは、(東京)裁判は勝者の論理以外の何ものでもなく、有罪判決は間違っているという日本の右翼の見方を共有している」と記す。
朝鮮日報などの韓国メディアも報じている。中央日報は、この法要が「一般戦没者でない戦犯を賛える行事で、『祖国の礎』という表現を使って称賛したことで大きな波紋を呼ぶことが予想される」と記す。そして、安倍首相はこれまで、靖国参拝について「戦犯を崇拝するのではなく、戦争の惨禍で人々が苦痛を受けない時代を作るという決意を伝えようとしたもの」と釈明してきたとし、今回の件でそれが嘘だったことが証明されたと非難している。