安倍内閣改造は「脱・年功序列」 女性登用方針と合わせ、海外注目
9月3日に内閣改造が行われる。女性の労働力活用を推進する首相は、女性閣僚の数を大幅に増やすとみられる。また、菅官房長官、麻生財務相などの残留が予想される中、石破幹事長の入閣はほぼなくなった。
石破氏の処遇に関するものに集中する日本の報道に対して、海外の報道はどうだろうか。
【ベテラン男性議員は辛い】
英フィナンシャル・タイムズ紙は、自民党議員の人生は、これまでサラリーマンと同じ年功序列であったとし、「5期務めれば、党の経験則から、入閣が保障される」ことになっていたと述べる。つまり、内閣改造は「たくさんのベテラン議員が、政府の上層部で仕えることができるよう保証するための、重要な手段となっていた」と同紙は指摘する。
ところが事態は変わり、「90年代からの日本経済の反転が、終身雇用や年功序列による昇進のような慣行を弱め、民間における仕事上の保障をむしばんでいるように、政治の大変動が、議員の出世街道を不安定なものにしている」と同紙は述べる。
現在の安倍政権以前の自民党が野党であった3年間で、閣僚未経験のベテランは増加。アナリストやメディアは、20以下の閣僚ポストに、現在約60人の候補がいると推測する。安倍首相の女性の就業機会を増やすという誓いに合わせ、新内閣では6人の女性閣僚が誕生するだろうと言われていることから、さらに多くの男性議員があぶれることになりそうだ(フィナンシャル・タイムズ紙)。
【石破氏は総裁選を視野に】
一方、ウェブ誌『ディプロマット』は、石破幹事長が新内閣での安全保障法制担当大臣の職を拒否したことに注目。石破氏が、2015年9月の自民党総裁選に向けて賭けに出たと指摘する。
時事通信に語ったある情報筋は、「安保政策に関して、石破氏はもともと安倍首相とは意見を異にする」と指摘。そして石破氏が安保法制相になれば、国会で、政権の集団的自衛権の新解釈を成文化するための先鋒になるだろうと話す(『ディプロマット』)。
安倍首相のアプローチに賛同しないからか、評判のよくない政策に強く関連付けられる政治的代償を気にしてかは分からないが、石破氏としては、集団的自衛権を押す安倍政権の顔にはなりたくないというのが、同誌の見立てだ。石破氏は、安倍氏の人気がこの一年で相当降下することと、党内の大きな派閥から継続的に支持を受けられることを期待して、次の総裁選を目指しているのかもしれない、と同誌は述べている。
【地方再生へ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、安倍首相が、「地方再生がアベノミクスの第2ラウンドの柱だ」とし、今回の改造の理由のひとつに、アベノミクス推進のための人材変更の必要性を挙げたと報じている。
学習院大学で政治学が専門の野中尚人教授は、「首相は大規模金融緩和だけでは十分ではないことに気づいていると思う。地方にもアベノミクスの成果を広げていく方法を、首相が探している」と述べ、そのような政策は前代未聞の金融緩和のように人目は引かないが、長期の経済成長には重要だ、と指摘している(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。