「譲歩しない日本とカナダをTPPから外せ」米議員140名が大統領に陳情
アメリカの共和・民主超党派議員団が30日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で関税撤廃に応じない日本とカナダを批判する書簡をオバマ大統領に宛てて送った。
【悪い前例を作ると懸念】
ロイターによると、書簡には共和党のデーブ・キャンプ歳入委員長や委員会のデビン・ヌーンズ議員、および委員会トップで民主党のチャールズ・ランゲル議員など下院議員の3分の1近くに相当する与野党140人が署名しており、日本とカナダの姿勢に「深い懸念」を表明しているという。
書簡は、日本が「前例のない、受け入れられない」提案をしていると非難、他の交渉にもダメージを与え得る前例となってしまうと主張している。『The Hill』は「もし関税撤廃が拒絶されたまま合意が結ばれたら、アメリカとEUとの交渉にも影響する」と述べている。
また書簡は「両国が譲歩しない場合は日本およびカナダ抜きでTPP交渉を進めるべきだ」と主張しているとのことである。
【日本とカナダと米養豚界】
日本とカナダの市場を開けるかどうかは、オバマ政権のアジア外交のカギ、とロイターは述べている。
米養豚業界は議会の支持を歓迎している。というのも日本は米国の豚肉輸出先第4位で、カナダは2位なのだという。
書簡は「カナダの熱意に欠ける姿勢は問題だ」としており、「日本は交渉参加にあたり、関税撤廃は合意の要であるということに賛同している」と主張している。
【日本はJAを見限るべき、と米誌】
『ザ・ディプロマット』のミナ・ポルマン氏は「日本が本当に景気を立て直したいならば、TPPの勢いを失ってはいけない」との見解を示している。
日本において農業界はずっと、保守派政党の支援基盤だった。しかし近年、自民党はJAへの依存を減らしており、昨年安倍首相がJAの反対を押し切ってTPPの参加を表明後も選挙に勝利したことは、その傾向を顕著に表している。かつ農業人口は高齢化していることから、今後は減少が避けられず、JAはもはやかつてのような「票集めマシン」ではない、と同氏は述べる。
かわりに台頭しているのが経団連の影響だ。もし日本がTPPから取り残されたら、製造業は大きな痛手となる。6月に新たに就任した経団連の榊原会長からは再び政治への関与を高める傾向が見られると同氏は言う。
「経団連がTPPを押し進めたいならば行動は急ぐべき。自由貿易へのコミットを明確に示す以外に、日本が21世紀のグローバル経済を生き抜く道はない」と同氏は主張している。