自衛隊の離島上陸訓練、米を意識? “戦う意志を示している”と米専門家

 自衛隊は7月、アメリカやその他の国と、ハワイで上陸訓練を行った。

 29日の演習では、ヘリコプターから自衛隊員による偵察隊が砂浜近くの海に降下。自衛官らは膨張式いかだに乗り込み、米、豪、インドネシアの軍が水陸両用車で上陸する前に浜の偵察を行った。

【離島奪還のための訓練】
 上陸作戦の演習は、自衛隊にとっては比較的最近になってのことだが、中国と領有を巡り対立している小さな島々での防衛能力を向上させようとの考えからだ、とAP通信は報じている。

 日本政府は既に、離島の奪還作戦などを念頭に、2018年までに垂直離着陸輸送機「オスプレイ」を17機購入することを決めている。また、離島での紛争に備え、上陸訓練を強化している。

 ホノルルに拠点を置くシンクタンク「パシフィック・フォーラムCSIS」のブラッド・グラッサーマン氏は、日本政府は中国が島々に軍隊を上陸させるのではないかと恐れており、日本はそれを防ぐために戦わなければならない、と述べた。「(領土問題を巡っては)一触即発の状況にある。それゆえに日本の主張に対抗しようとする国を、中国であれ他国であれ追い払うための備えをしておく必要がある」(AP)

 日本の自衛隊は長年、北海道など北方の島でソビエト連邦との冷戦の脅威に対抗することに重点を置いてきた。しかし、中国軍の拡大により、国土の南にその関心は移った、とAPは指摘。

 安倍晋三首相は2013年12月、自衛隊の中に新しい上陸作戦部隊の創設を考えていると述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、新部隊は、全ての離島へのいかなる侵略に対しても瞬時に奪還を図るためだという。

【「自衛官たちは日本のサムライだ」】
 第3護衛隊群司令、中畑康樹海将補は、合同演習では自衛官らが自身の技能を磨く良い機会となっている、と述べた。同氏は、訓練の内容について「素晴らしかった。自信を持って任務を続けて欲しい」と自衛官らを鼓舞した(AP)。

 同じく訓練に参加した米太平洋海兵隊のリチャード・シムコック副司令官もまた、日本の自衛隊の能力はどんどん向上していると、賞賛した。「侍の姿を見た。今ここで言っておくが、その時がくれば、我々が共通のあらゆる敵に対し一致団結して戦うことを楽しみにしている」(AP)

 グラッサーマン氏は、合同演習は日本が相手国からやり方を学び習得するためだけではなく、同盟国であるアメリカ側に日本は戦う意志があるのだと示すことにもなる、としている。

【戦争は現実的なこと】
 日本政府は2013年10月、沖縄で3万4000人の自衛官による上陸訓練を行うと発表。明らかに中国との軍事衝突を想定したものだった、とウェブ外交誌『ディプロマット』は報じている。

 米海軍大学のジェームズ・ホームズ教授は、自衛隊にとって島の奪回という筋書きはとても現実味のあるものだ、とみている。加えて、日本政府が最近、集団的自衛権を禁止した憲法の再解釈を決めたことで、自衛隊が日本周辺以外でも戦闘行為を行うことになるかもしれない」と推測している。

 安倍首相は、就任直後から力による問題解決の姿勢を強めている、WSJは指摘。7月1日には、日米同盟の機能強化を目的とし、憲法の再解釈を閣議決定した。また、“グレーゾーン”と呼ばれる戦闘と平時の間の曖昧な状況でも、自衛隊が活動しやすくなるよう考えている(WSJ)。

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Text by NewSphere 編集部